第 3 回のテーマは「 掛け算 , 公式と証明 」です。
掛け算を有効に使う上で、ある法則( 公式 )の存在が非常に重要になってきます。
なのでこれを機に、そもそも「 公式 」とは何か?、そして「 証明 」と公式の関係性は?、これを理解しておきたいと思います。
掛け算の考え方
掛け算は「 乗法 」とも言い、掛け算の結果を「 積 」と呼びます。
これは掛け算が、「 同じものを持ってきて、上に乗せる 」つまり「 積み重ねる 」という意味だからです。
「 × 」の右側( かける数 )は、「 同じものを持ってくる回数 」です。
例えば、5 × 3 は「 5 」を「 3 つ 」足すこと。つまり 5 × 3 = 5 + 5 + 5 ということです。
九九を忘れた時の裏技
6 の段以上の時に便利な、「 補数 」を利用した方法です。
補数とは「 その数に足したとき、桁上がり( 桁が 1 つ増える )する数のうち、最も小さい数 」のことです。
例えば、3 の補数は「 7 」、6 の補数は「 4 」、24 の補数は「 76 」、356 の補数は「 644 」といった感じです。
その方法は、「 10 に対する補数( 足して 10 になる数 )を足したもので掛け算して、最後にその余分を引く 」というやり方です。
例えば、7 の段なら「 7 の補数 」は「 3 」なので、足して 10 を作り掛け算( 10 の段の掛け算 )をして、余分な 3 を掛けた分だけ引きます。
- 7 × 1 = ( 7 + 3 )× 1 − ( 3 × 1 ) = 10 − 3 = 7
- 7 × 2 = ( 7 + 3 )× 2 − ( 3 × 2 ) = 20 − 6 = 14
- 7 × 3 = ( 7 + 3 )× 3 − ( 3 × 3 ) = 30 − 9 = 21
このように、九九を簡単な掛け算( 10 の掛け算 )と引き算で表すことができます。
公式と証明
証明とは「 どんな数でも、そのルールが成り立つことを明らかに示すこと 」です。
公式( 法則 , 定理 )とは「 証明されたルール 」のことです。
このように、公式と証明は「 表裏一体 」の関係であり、証明されて初めて、公式として認められます。つまり「 証明から公式が見つかる 」ということです。
数学にたくさんの公式があるという事は、それだけ歴代の数学者たちが、一生懸命ルール( 法則 )を見つけ、証明してくれたという事です。
余談ですが、この「 公式と証明 」の関係は「 理論と論理 」の関係性と酷似しています。
理論( セオリー )とは「 法則性であり、数学でいう公式にあたるもの 」です。
論理( ロジック )とは「 その法則性までの思考方法( 考え方 )、過程( プロセス )であり、数学での証明にあたるもの 」です。論理はあくまでも「 思考 」です。
「 論理的思考から見つかった理論 」という言い方ができます。「 論理から理論が見つかる 」ということです。
論理的思考とは「 複雑な物事を整理、分析して因果関係( 法則性 , 理論 )を見出し、そこまでの道筋を示すこと 」です。なので「 問題解決能力 」とも言われます。
現代社会において論理的思考力が重要視されるというのは、「 問題解決能力 」を持った人材を世界が求めている。という事です。
この能力は、もちろんコンピューターやプログラミング能力にも通じています。コンピューターは「 論理で成り立ち、理論で動いている 」と言えるかもしれません。
「 交換法則 」と「 分配法則 」
交換法則とは「 足し算と掛け算は、順序を入れ換えても結果は変わらない 」という法則です。
これは例えば、足し算なら 3 + 5 = 5 + 3 = 8 や ( 2 + 3 )+ 4 = 4 +( 2 + 3 )= 9
掛け算なら 3 × 5 = 5 × 3 = 15 や ( 2 × 3 )× 4 = 4 ×( 2 × 3 )= 24 というように、実際に計算を重ねて、証明( 予想して確かめてみる )されたものです。
分配法則とは「 外の数を、カッコ内のそれぞれの数に配るように掛けても結果は変わらない 」という法則です。
これも例えば、2 ×( 3 + 4 )=( 2 × 3 )+( 2 × 4 )= 14 や 2 × 5 = 2 ×( 4 + 1 )=( 2 × 4 )+( 2 × 1 )= 10 のように具体的な計算で証明されたものです。
この「 分配法則 」は、この先あらゆる場面で使える、非常に有効な武器になります。
そして掛け算の筆算は、この分配法則で成り立っています。
例えば、13 × 6 =( 10 + 3 )× 6 =( 10 × 6 )+( 3 × 6 )= 60 + 18 = 78 といった感じです。
また、17 × 18 = 17 ×( 20 − 2 )=( 17 × 20 )−( 17 × 2 )= 340 − 34 = 306 のように、カッコ内に分ける数が大きくなる場合( この場合 8 )は、引き算を使うと計算しやすいです。
2 桁以上の掛け算でも、片方を「 一の位 , 十の位 , 百の位 」など「 各位 」に分けて掛け算すれば、計算がしやすくなります。
「 おみやげ算 」という技
「 2 桁の数同士の掛け算で、十の位が同じ数 」の時に使える、「 おみやげ算 」というテクニックです。
手順は、
- 「 一の位の数 」を「 もう片方の数 」に渡して( 足して )計算する
- 元の数の「 一の位同士を掛けたもの 」を、最後に足したら完了
例えば、28 × 25 なら、28 に 25 の一の位「 5 」を渡します( 足します )。逆に 25 に 28 の一の位「 8 」を足しても構いません。
つまり、28 + 5 or 25 + 8 = 33 となり、25 or 28 → 20 になるという事です。
よって、 33 × 20 となるので、これで計算します。分配法則を使って計算すると、
( 30 + 3 )× 20 =( 30 × 20 )+( 3 × 20 )= 600 + 60 = 660 となります。
そして元の数の「 一の位同士 」を掛けるので、28 の「 8 」と 25 の「 5 」を掛けると、8 × 5 = 40 となります。
最後に、それぞれ計算して出した、「 660 」と「 40 」を足すと 660 + 40 = 700 となり、これが答えになります。
この「 おみやげ算 」は、2 桁の数の「 2 乗 」を計算する時にも便利です。
整数の掛け算
例えば、1 × 1 = 1 とは (+1)×(+1) = +1 という事です。
(-1)× 1 = -1 とは「 マイナスの数( -1 )が、いくつ( 1 つ)の時は 」という意味なので、答えは マイナスの数( -1 )となります。
この結果から、交換法則により、1 ×(-1) = -1 が成立する事になります。
つまり「 マイナスを掛ける 」とは、「 0 を基準にして反対側の世界( 正→負 , 負→正 )に、数の向きが変わる( 逆になる )事 」だと言えます。
例えば、3 ×(-2) = -6 のように、マイナスを掛けているので、答えが「 正→負 」と数の向きが変わっています。
以上のことから、(-1)×(-1) = 1 とは、マイナスの数に「 マイナスを掛けている( 向きが変わる ) 」ので、答えは「負→正 」となります。
あとがき
今回のポイントは、掛け算には「 分配法則 」が非常に有効である事。
そして「 マイナスを掛ける 」とは、「 数の向き( 正 , 負 )が変わる 」という事です。
掛け算はこの 2 つがとても大切なので、是非とも覚えておきたい知識です。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。