第 6 回のテーマは「 分数の概念と計算方法 」です。
割り算 , 割合 , 比の「 変形 」である「 分数 」についての話です。
今までの「 割り算 , 割合 , 比 」の知識は、この「 分数 」を理解することで全てが繋がり、完成します。
分数は小数とも密接な関わりがあります。なぜ整数だけではダメで、分数や小数が生まれたのか。
こういった所から書いていきたいと思います。
目次
分離量と連続量
「 量 」とは「 物事の大きさや多さなど 」を表します 。
そしてこの量は「 分離量 」と「 連続量 」に分けられます。
分離量とは、
- 人、動物、物などの「 単体の数 」を表す。
- 自然数( 正の整数 )で表現される。
- 単位が日本語になる。( 人、個、台、匹、本など )
- 最小単位が決まっている。( 1 人、1 個、1 台、1 匹、1 本など )
連続量とは、
- 水、土地、時間などのように「 無限に細かく 」分けられる。
- ひとつに合わせると「 境目がなくなる 」もの。
- 「 広さ、重さ、長さ、大きさ、濃度、温度、密度など 」を表す。
- 「 小数や分数 」でも表される。
- 単位が「 アルファベット 」で表せる。( m、g、ℓ など )
- 最小単位が「 決まっていない 」( 人為的に単位を決めて測定している )
以上のような特徴があります。
例えば、人数は「 分離量 」ですが、身長は「 連続量 」です。
分数は「 連続量 」を表す
連続量は「 半端がでる 」ものなので、その半端を表すのが、分数や小数です。
そして、連続量とは「 何かを比べる為に生まれたもの 」です。「 量は比較から始まる 」と言われます。
分数は、この「 連続量 」を表すものです。つまり分数や小数は「 比較のために生まれた概念 」だと考えられます。
分数の概念
ここから、今回のメインである「 分数の概念 」に入っていきます。
「 分数と割り算の関係 」「 分数の構成 」「 分数の注意点 」「 分数の重要な原理 」といった流れで書いていきます。
分数は割り算の「 化身 」
分数は割り算の「 化身 」である。と表現される事があります。
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{3}\) とは「 1 つのものを 3 等分した時の 2 個分 」という意味です。
式にすると、\(\displaystyle\frac{2}{3}=1\div3\times2\) であり、これは \(\displaystyle\frac{1}{3}\) が 2 個分です。
そして、もうひとつ大事な意味が、\(\displaystyle\frac{2}{3}\) とは「 1 つのものを 2 倍にして、3 つに分けたもの 」とも言えます。
式にすると、\(\displaystyle\frac{2}{3}=1\times2\div3\) であり、これも \(\displaystyle\frac{1}{3}\) が 2 個分です。
以上より、\(1\div3\times2=1\times2\div3=\displaystyle\frac{2}{3}\) という関係である事が分かりました。( ÷3 と×2 の順序を換えても結果は同じ )
分数の構成
分子は「 全体の数量( 割られる数 ) 」であり、分母は「 等しく分ける数( 割る数 ) 」です。
分数とは \(\displaystyle\frac{分子(割られる数)}{分母(割る数)}=分子\div分母\) となっています。
例えば、\(\displaystyle\frac{1}{2}\) は「 1 ÷ 2 」であり、比は「 1 : 2 」となります。
2 つに分ける( ÷2 )とは、\(\displaystyle\frac{1}{2}\) を掛ける事でもあります。( その物の \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 個分という意味 )
同様に 3 つに分ける( ÷3 )とは、その物を \(\displaystyle\frac{1}{3}\) ずつ分ける事なので、\(\displaystyle\frac{1}{3}\) を掛ける事です。
この事から「 整数 」とは「 1 つに分けた( ÷1 をした)もの、つまり分母( 割る数 )が 1 である 」という事ができます。
- −1 とは \(\displaystyle\frac{-1}{1}\) の事であり、−1 ÷ 1 = −1
- 0 とは \(\displaystyle\frac{0}{1}\) の事であり、0 ÷ 1 = 0
- 1 とは \(\displaystyle\frac{1}{1}\) の事であり、1 ÷ 1 = 1
- 2 とは \(\displaystyle\frac{2}{1}\) の事であり、2 ÷ 1 = 2
このように「 整数 」には「 分母の 1 」が隠れています。
以上の事をまとめると、
\(分数=\displaystyle\frac{整数(0,\pm1,\pm2…)}{自然数(1,2,3…)}\) という形で構成されています。
また、これら( 自然数 , 整数 , 分数 )は「 有理数( 分数で表せる数のこと ) 」と呼びます。小数も「分数で表せるもの 」は有理数になります。
つまり分数は、分子が「 0 」であれば全体で「 0 」を表し、分母が「 1 」であれば「 整数( 分子 ) 」そのものを表すと言えます。
ちなみに、分母が「 0 」は「 0 で割る事 」であり、これは「 不能 」なので扱われません。詳しくは第 4 回のテーマ「 割り算の概念 」の「 0 で割ることはできない 」で解説しております。
分数の注意点
分数の厄介なところは、大きさ( 量 )が同じなのに、見た目の数字が無限に変わってしまう事です。
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{3}=\frac{4}{6}=\frac{6}{9}=\frac{8}{12}=\frac{10}{15}…\)
といったように、どれも同じ大きさ\(\left(\displaystyle\frac{2}{3}\right)\)であるのに、数字が全く変わっています。
これがあるので、分数には「 約分 」や「 通分 」が必要になるわけです。
分数の重要な原理
「 分子と分母に同じ数を掛けても( 同じ数で割っても )大きさは変わらない 」これが分数の重要な原理になります。
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{3}\) の分子と分母に 2 を掛けると、\(\displaystyle\frac{2\times2}{3\times2}=\frac{4}{6}\) です。
さらに、この \(\displaystyle\frac{4}{6}\) の分子と分母に 3 を掛けると、\(\displaystyle\frac{4\times3}{6\times3}=\frac{12}{18}\) となります。
そして、これらは \(\displaystyle\frac{2}{3}=\frac{4}{6}=\frac{12}{18}\) という関係になっています。
これは「 元の大きさを、ただ細かく分けているだけ 」なので、細かく分けた分を同じ分だけ、分子も増やせば「 比率 , 割合に変化はない 」からです。
そして \(\displaystyle\frac{2}{3}\) に戻したい場合は、逆に「 分子と分母を同じ数で割ればよい 」となり、これが「 約分 」です。
ただ、約分の反対、つまり分子と分母に同じ数を掛ける時の名前がないのです。明治時代までは「 倍分( ばいぶん ) 」と呼ばれていました。
数の大きい分数を約すから「 約分 」, 倍にするから「 倍分 」とイメージすると、覚えやすいかも知れません。
そして「 通分 」とは、2 つ以上の分数の「 分母が同じになるように 」、それぞれの分数を「 倍分する 」ことです。
互いに通じる分数にするから「 通分 」と覚えるといいかも知れません。
分数と小数
分数は「 数の大小関係がわかりにくい 」という欠点があります。
そこで、0 〜 1 までの数を具体的に表す「 小数 」が使われます。
例えば、
- \(\displaystyle\frac{1}{10}=1\div10=0.1\)
- \(\displaystyle\frac{1}{100}=1\div100=0.01\)
- \(\displaystyle\frac{1}{1000}=1\div1000=0.001\)
また、
- \(\displaystyle\frac{1}{10}\times10=\frac{10}{10}=1\)
- \(\displaystyle\frac{1}{10}\times100=\frac{100}{10}=10\)
- \(\displaystyle\frac{1}{10}\times1000=\frac{1000}{10}=100\)
以上のことから、10 で割るごとに「 小数点が左に移動 」し、10 を掛ける( 10倍 )ごとに「 小数点が右に移動 」する事が分かりました。
分数から、数の大小関係を判断する手順としては、
例えば、\(\displaystyle\frac{11}{10}\) なら、\(\displaystyle\frac{10}{10}=1\) であり \(\displaystyle\frac{20}{10}=2\) なので、\(1\lt\displaystyle\frac{11}{10}\lt2\) である事が分かります。
そして、11 = 10 × 1 + 1 なので \(\displaystyle\frac{11}{10}=\frac{10\times1+1}{10}=\frac{10}{10}+\frac{1}{10}\) であり、
\(1+\displaystyle\frac{1}{10}=1+0.1=1.1\) となります。
分数と小数が混在した計算の場合は、割り切れる( 小数に直せる )なら「 小数に統一 」して、割り切れないなら「 分数に統一 」して計算しましょう。
なので、
- \(\displaystyle\frac{1}{2}=0.5\)
- \(\displaystyle\frac{1}{3}=0.333…\)
- \(\displaystyle\frac{1}{4}=0.25\)
- \(\displaystyle\frac{1}{5}=0.2\)
- \(\displaystyle\frac{1}{8}=0.125\)
- \(\displaystyle\frac{1}{10}=0.1\)
以上の事は覚えておくと、計算する時に便利です。
分数の計算方法
最後は「 分数の計算の仕組み 」です。
「 分数の足し算 , 引き算 」「 掛け算と割り算の関係 」「 分数の掛け算 , 割り算 」の流れで書いていきます。
分数の「 足し算 , 引き算 」
例えば、\(0.25+0.2=0.45\) を分数で表すと、\(\displaystyle\frac{25}{100}+\frac{2}{10}=\frac{45}{100}\) となります。
これを約分すると、\(\displaystyle\frac{1}{4}+\frac{1}{5}=\frac{9}{20}\) です。この式はどんな計算方法で成り立っているのでしょうか。
\(\displaystyle\frac{9}{20}\) とは「 全体を 20 等分した時の 9 個分 」なので、これと比較する為に \(\displaystyle\frac{1}{4}\) と \(\displaystyle\frac{1}{5}\) も同じ状態( 全体を 20 とした状態 )で比べたいです。
つまり「 分母を 20 に統一して比べたい 」ので、ここで「 1 の変形 」を使います。
「 1 を掛けても、大きさは変わらない 」事と「 分子と分母に同じ数を掛けても、大きさは変わらない 」事の 2 つを使い、分母を 20 に統一します。
\(\displaystyle\frac{1}{4}\times\frac{5}{5}=\frac{5}{20}\) \(\displaystyle\frac{1}{5}\times\frac{4}{4}=\frac{4}{20}\) こうすると分母を 20 に統一できます。
以上から、\(\displaystyle\frac{1}{4}+\frac{1}{5}=\frac{5}{20}+\frac{4}{20}=\frac{9}{20}\) となっています。
つまり、分数の足し算 , 引き算をするには「 共通の分母を作る事 」が必要であり、これが「 通分 」です。
通分とは「 公倍数( 共通な倍数 ) 」を見つける事です。
一番簡単な「 公倍数 」の見つけ方は「 両者を掛け算する 」ことです。今回なら 4 × 5 = 20 ( 分母同士を掛けたもの → 公倍数 )
「 掛け算と割り算 」の関係
例えば、\(6\times\displaystyle\frac{1}{3}\) は「 6 の \(\displaystyle\frac{1}{3}\) 個分 」なので、「 6 を 3 つに分ける 」つまり「 6 ÷ 3 」です。
また、3 ÷ 3 = 1 であり、( 1 ÷ 3 )× 3 = \(\displaystyle\frac{1}{3}\times3\) = 1 であり、
3 ×( 1 ÷ 3 ) = \(3\times\displaystyle\frac{1}{3}\) = 1 なので、\(3\div3=3\times\displaystyle\frac{1}{3}\) と言えます。
以上により、「 割る 」とは「 逆数を掛ける 」という意味です。
この手法を使うことで「 割り算を掛け算に書き換える 」ことができます。
分数の「 掛け算 , 割り算 」
分数の掛け算は「 分子同士 , 分母同士を掛ける 」
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{3}\times\frac{1}{5}=\frac{2\times1}{3\times5}=\frac{2}{15}\) となります。
分数の割り算は「 割る数の逆数を掛ける 」
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{3}\div\frac{5}{7}=\frac{2}{3}\times\frac{7}{5}=\frac{2\times7}{3\times5}=\frac{14}{15}\) となります。
あとがき
分数は、割り算や比の「 変形 」と書きましたが、こうやって見てみると、変形どころか割り算や比「 そのもの 」なのだと感じました。
これを知った時「 なんだ、そうだったのか〜 」と感動して嬉しくなりました。知らない事を知るのはやっぱり楽しいです。
この記事が「 割り算 , 比 , 分数 」の繋がりを理解する、何か一助となれば幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。