第 9 回のテーマは「 指数のしくみ , 約分と素因数分解 」です。前回( 約数と倍数 素数と素因数分解 )学んだ素因数分解の続きの話になっています。
同じ数を掛け算する「 累乗(るいじょう) 」で使われる「 指数(しすう) 」の定義や、指数を使った計算の仕組み、「 負の指数 」の定義と使い方。
そして「 指数を使って素因数分解を表す 」ことで、「 約分( 公約数 ) 」が簡単にできるようになります。
素因数分解の世界が広がっていく話です。
指数のしくみ
同じ数を、繰り返し掛け算することを「 累乗(るいじょう) 」と言います。
例えば、元になる数が 2 なら \(2^2\) ( 2 の 2 乗 ) , \(2^3\) ( 2 の 3 乗 ) , … と書いていきます。
累乗は「 掛け算した数の個数 」を、その肩に乗せて表しています。
\(2^2\)= 2×2 ←( 2 個 ) , \(2^3\)= 2×2×2 ←( 3 個 ) , … ということです。
この「 肩の数字 」を「 指数( 累乗の指数 ) 」と呼びます。
そして、累乗の掛け算というのは「 指数の足し算 」になっています。
例えば、\(2^2\times2^3\)= (2×2)×(2×2×2) = 2×2×2×2×2 = \(2^5\)
つまり、\(2^2\times2^3=2^{2+3}=2^5\) ということです。
\(2^1\) ( 2 の 1 乗 ) とは「 2 そのもの 」なので、\(2^1=2\) となります。
例えば、\(2\times2^3=2^1\times2^3=2^{1+3}=2^4\) ということです。
累乗の割り算
例えば、32 ÷ 8 = 4 分数で表すと \(\displaystyle\frac{32}{8}=4\) があるとします。
これを累乗で表すと \(32=2^5\) \(8=2^3\) \(4=2^2\) なので、
\(2^5\div2^3=\displaystyle\frac{2^5}{2^3}=2^2\) となります。これは 5 乗 と 3 乗 から 2 乗 が導かれています。つまり 5 − 3 = 2 なので、
\(2^5\div2^3=\displaystyle\frac{2^5}{2^3}=2^5\times\frac{1}{2^3}=2^5\times2^{-3}\) という状態だということです。
これを解いて、\(2^5\times2^{-3}=2^{5-3}=2^2\) となっているわけです。
よって、累乗の割り算は「 逆数の関係 」を利用して「 負の指数 」を定義すれば良いと言えます。割るとは逆数を掛ける事です( 分数の概念 の掛け算と割り算の関係より)。
例えば、\(2^{-1}=\displaystyle\frac{1}{2^1}\) \(2^{-2}=\displaystyle\frac{1}{2^2}\) \(2^{-3}=\displaystyle\frac{1}{2^3}\) … となっています。
結論、負の指数だと逆数になる。つまり「 \(a^{-n}=\displaystyle\frac{1}{a^n}\) 」ということです。
「 0 乗 」の仕組み
逆数とは、元の数を掛けたら「 1 」になる数( 分子と分母を逆にした数 )なので、
\(2^1\times\displaystyle\frac{1}{2^1}=1\) \(2^2\times\displaystyle\frac{1}{2^2}=1\) \(2^3\times\displaystyle\frac{1}{2^3}=1\) ということです。
これを負の指数を使って表すと、
- \(2^1\times2^{-1}=2^{1-1}=2^0=1\)
- \(2^2\times2^{-2}=2^{2-2}=2^0=1\)
- \(2^3\times2^{-3}=2^{3-3}=2^0=1\)
以上が成立する事になります。
よって、全ての数( 0 は除く )の「 0 乗 」は「 1 」という事になります。
分数の「 負の指数 」
例えば、\(\displaystyle\frac{5}{7}\times\frac{7}{5}=1\) という式を、負の指数( 逆数になる )を使って考えてみると、
\(\displaystyle\frac{5}{7}=\left(\frac{7}{5}\right)^{-1}\) \(\displaystyle\frac{7}{5}=\left(\frac{5}{7}\right)^{-1}\)なので上記の式は、
\(\left(\displaystyle\frac{5}{7}\right)^1\times\left(\displaystyle\frac{5}{7}\right)^{-1}=\left(\displaystyle\frac{5}{7}\right)^{1-1}\)
よって \(\left(\displaystyle\frac{5}{7}\right)^0=1\) と書き換えることができます。
このように、分数でも「 0 乗 = 1 」が成り立っています。
また、\(2\times\displaystyle\frac{1}{2}=\frac{2}{2}=1\) というのも、
\(2^1\times2^{-1}=2^{1-1}=2^0=1\) という関係が成り立っています。
約分と素因数分解
例えば、\(\displaystyle\frac{1188}{630}\) の分子と分母を、それぞれ素因数分解すると、
\(\displaystyle\frac{2^2\times3^3\times11}{2\times3^2\times5\times7}\) となります。ここから分子と分母の共通している数を取り出すと、
\(\left(\displaystyle\frac{2\times3^2}{2\times3^2}\right)\times\displaystyle\frac{2\times3\times11}{5\times7}\) となります。
つまり、\(1\times\displaystyle\frac{2\times3\times11}{5\times7}=\displaystyle\frac{66}{35}\) と約分できるのです。
一般的な約分だと、\(\displaystyle\frac{1188}{630}\) の分子と分母を 2 で割って(共通の 2 を取り出して)、
\(\displaystyle\frac{594}{315}\) 分子と分母を 3 で割り \(\displaystyle\frac{198}{105}\) また 3 で割り \(\displaystyle\frac{66}{35}\) とやっています。
やっている事は同じなので「 素因数分解で約分ができる 」という事です。
「 互いに素 」と「 既約分数 」
もう約分ができない、つまり共通の素因数( 約数 )がない 2 数の関係を「 互いに素 」と言います。上記の例だと 66 と 35 は互いに素です。
また「 互いに素 」な分子と分母を持つ分数を、既に(すでに)約分されてしまったという意味で「 既約分数(きやくぶんすう) 」と言います。
「 分数を簡単にしなさい = 約分しなさい = 既約分数を求めなさい 」は全て同じ意味です。
つまり「 分子と分母を、互いに素になるまで、共通する素因数を取り出す 」という事です。
公約数と素因数分解
先ほどの \(\displaystyle\frac{1188}{630}=\displaystyle\frac{66}{35}\) は、\(\displaystyle\frac{1188}{630}=\displaystyle\frac{66\times18}{35\times18}\) でもあります。
この「 18 」というのは「 1188 ÷ 66 と 630 ÷ 35 」で求めたものです。先ほどの例で約分した時に「 分子と分母から取り出した共通の数 」そのものです。
つまり、この「 18 」とは分子と分母の「 公約数( 共通の約数 ) 」なのです。
そして、この「 公約数 18 」は素因数分解で見つかったものです。
\(1188=2^2\times3^3\times11\) \(630=2\times3^2\times5\times7\)
この 2 つの数に共通する約数(公約数)が「 \(2\times3^2=18\) 」だったのです。
そして、この公約数を取った( 約分した )残りが \(\displaystyle\frac{66}{35}=\displaystyle\frac{2\times3\times11}{5\times7}\) でした。
さらに、この「 公約数 18 」は「 最大公約数 」でもあるのです。
そして「 最大公約数の約数 = 公約数 」という関係があります。最大公約数は「 \(2\times3^2=18\) 」なので 18 の約数を求めれば、全ての公約数が分かります。
18 は \(2\times3^2\) つまり「 2 , 3 , 3 」の積の組み合わせで、最大公約数の約数( 公約数 )が出来ているという意味になります。
この「 積の組み合わせ 」は「 0 乗を含めた指数 」を使って表します。今回だと「 2 , 3 , 3 」なので「 2 が 1 個 , 3 が 2 個 」使えます。
つまり、2 の候補は \(2^0\) と \(2^1\) の 2 通りとなり、3 の候補は \(3^0\sim3^2\) までの 3 通りとなります。
これら合計 6 通り( 2×3 通り)の積の組み合わせを見てみると、
\(2^0\times3^0=1\) \(2^1\times3^0=2\) \(2^0\times3^1=3\)
\(2^1\times3^1=6\) \(2^0\times3^2=9\) \(2^1\times3^2=18\)
このように求められた「 1 , 2 , 3 , 6 , 9 , 18 」は、最大公約数 18 の約数であり、1188 と 630 の全ての公約数でもあるという事です。
要するに「 素因数分解した数を、指数を使った積の組み合わせ( 0 乗も含む )で表すと、約数が全てわかる 」という事です。( 18 を素因数分解する事で 18 の約数が全てわかる )
そして「 最大公約数の約数を求めた場合は、その約数がそのまま公約数になっている 」という事です。( 18 は最大公約数だったので、18 の約数は公約数でもある )
既約分数である \(\displaystyle\frac{66}{35}\) の分子と分母それぞれの約数も、同様に素因数分解を使って求めます。
66 = 2×3×11 35 = 5×7 なので、66 の約数は「 2 , 3 , 11 」の積の組み合わせ( 0 乗も含む)、35 の約数は「 5 , 7 」の積の組み合わせ( 0 乗も含む)で出来ています。
上記のように、指数を使って積の組み合わせを見ると、66 の約数が「 1 , 2 , 3 , 6 , 11 , 22 , 33 , 66 」 35 の約数が「 1 , 5 , 7 , 35 」とわかります。
ここで注目したいのが、既約分数の分子と分母の公約数は「 1 だけ 」で、最大公約数も「 1 」である事です。
よって、既約分数とは分子と分母の最大公約数が「 1 」である分数と言えます。
例えば、1188 と 630 の最大公約数は 18 というのを、( 1188 , 630 ) = 18 と表記します。
また、互いに素な 2 数( 例えば 66 と 35 )の公約数は「 1 」のみというのを、
( 66 , 35 ) = 1 と表記します。
あとがき
細かく複雑な話になってしまったのですが、理解してみると非常にシンプルな仕組みだと思います。
今回のポイントは「 最大公約数の約数 = 公約数 」と「 素因数分解した数を、指数を使った積の組み合わせ( 0 乗も含む )で表すと、約数が全てわかる 」です。
以上と、素因数分解を使う事で「 最大公約数も約数も公約数もすべて求められる 」という事です。
そして「 負の指数 」という概念もとても便利なものでした。これはまた大きな武器になりそうです。
次回で素因数分解 3 部作の完結です。今回学んだ 2 つのポイントを使って、素因数分解がさらなる飛躍を見せます。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。