「 数の入門と算数 」シリーズは今回で完結です。
最終回のテーマは「 素因数分解 , 約数の個数と総和 , 公約数と公倍数 」です。
前々回( 約数と倍数 素数と素因数分解 )、前回( 指数のしくみ 約分と素因数分解 )、と続いてきた「 素因数分解 3 部作」の完結編になります。
素因数分解によって「 約数の個数と総和 」が求められる事、そしてそこから見える「 約数と公約数のしくみ 」、「 ユークリッドの互除法 」という最大公約数の求め方。
そして「 倍数と公倍数のしくみ 」と素因数分解との関係性、「 最大公約数と最小公倍数の関係 」。
以上のような事を書いていきたいと思います。
今まで学んだ「 素因数分解の集大成 」といった内容になっています。
目次
約数の個数
例えば「 1188 」を素因数分解すると「 \(2^2\times3^3\times11^1\) 」です。( 2 が 2 個 , 3 が 3 個 , 11 が 1 個 )
つまり「 2 , 2 , 3 , 3 , 3 , 11 」を、指数を使った積の組み合わせ( 0 乗も含む )で表すと、「 1188 」の約数が全てわかるという事でした。前回( 指数のしくみ 約分と素因数分解 )の公約数と素因数分解より。
- 2 は「 \(2^0\) , \(2^1\) , \(2^2\) 」で 3 通り
- 3 は「 \(3^0\) , \(3^1\) , \(3^2\) , \(3^3\) 」で 4 通り
- 11 は「 \(11^0\) , \(11^1\) 」で 2 通り
これで「 2 , 2 , 3 , 3 , 3 , 11 」の「 積の組み合わせ 」は合計 24 通り( 3 通り× 4 通り× 2 通り )、つまり 24 個。これが「 約数の個数 」となっています。
前回出した「 積の組み合わせは、合計○通り 」とは「 約数の個数 」を出していたわけです。
約数の個数を求める公式
約数の個数を求めるには「 指数を使った積の組み合わせ 」を使いました。そしてこれは「 0 乗 」も含めて考えています。
どの数にも 0 乗はあるので、実際にその数が持っている指数より「 1 つ多い 」組み合わせで考えている事になります。
よって、それぞれの素因数の指数に「 1 足したもの 」を掛け合わせれば「 約数の個数 」が求められる事になります。
上記の 1188 を素因数分解すると「 \(2^2\times3^3\times11^1\) 」だったので、2 の指数が「 2 」 3 の指数が「 3 」 11 の指数が「 1 」です。これら各指数に「 1 足したもの 」を掛け合わせると、
\(\left(2+1\right)\left(3+1\right)\left(1+1\right)=3\times4\times2\) となり、答えが 24 個と出ます。
約数の総和
「 1188 」を素因数分解すると「 \(2^2\times3^3\times11^1\) 」です。
ここで、各素因数「 \(2^2\) , \(3^3\) , \(11^1\) 」に注目し、各素因数ごとに以下のような「 式 」を作ります。
- \(2^2\) → 「 \(2^0+2^1+2^2\) 」
- \(3^3\) → 「 \(3^0+3^1+3^2+3^3\) 」
- \(11^1\) → 「 \(11^0+11^1\) 」
つまり「 各素因数の 0 乗 〜 持っている指数までの和の式 」を作るという事です。そして「 この式の積 」が「 約数の総和 」になっているのです。
- \(\left(2^0+2^1+2^2\right)=\left(1+2+4\right)=7\)
- \(\left(3^0+3^1+3^2+3^3\right)=40\)
- \(\left(11^0+11^1\right)=12\)
よって「 \(7\times40\times12=3360\) 」これが 1188 の約数の総和となります。
要するに「 素因数分解した各素因数から、指数( 0 乗も含む)を使った和の式を作り、これらの式の積が約数の総和になる 」という事です。( これが約数の総和を求める式 )
約数と公約数のしくみ
例えば「 18 , 24 」それぞれの約数を求めるには、先ほどの「 約数の総和を求める式 」を使えば求められます。
まず、18 と 24 を素因数分解します。
\(18=2\times3^2\) \(24=2^3\times3\) ここから「 約数の総和を求める式 」を作ると、
- 18 : \(\left(2^0+2^1\right)\left(3^0+3^1+3^2\right)\)
- 24 : \(\left(2^0+2^1+2^2+2^3\right)\left(3^0+3^1\right)\)
以上のようになります。そして、それぞれの式の積を「 分配法則 」を使い展開してみます。
式同士の積を分配法則で展開するには、( A+B )( C+D )= AC+AD+BC+BD のように 1 つずつ順番にカッコの中の数を掛けて行きます。
18 : ( 1+2 )( 1+3+9 ) なので、分配法則を使い展開すると「 1+3+9+2+6+18 」= 39 ( 約数の総和 )となり、
24 : ( 1+2+4+8 )( 1+3 ) なので、分配法則を使い展開すると「 1+3+2+6+4+12+8+24 」= 60 ( 約数の総和 )となります。
そして、この展開した式の各数字( 赤の数字 )が約数になっているのです。
つまり、18 の約数は( 小さい順に並べて )「 1 , 2 , 3 , 6 , 9 , 18 」であり、24 の約数は「 1 , 2 , 3 , 4 , 6 , 8 , 12 , 24 」であるという事です。
これにより、18 と 24 の公約数は「 1 , 2 , 3 , 6 」とわかり、同時に最大公約数が「 6 」である事もわかりました。
そして、前回の公約数と素因数分解で学んだ、「 最大公約数の約数 = 公約数」というのも確認してみると、
最大公約数 6 を素因数分解すると「 6 = 2×3 」ここから、約数の総和を求める式を作り、
\(\left(2^0+2^1\right)\left(3^0+3^1\right)\) なので ( 1+2 )( 1+3 ) これを展開すると 1+3+2+6 となり、最大公約数「 6 」の約数は「 1 , 2 , 3 , 6 」です」。
よって、最大公約数の約数( 1 , 2 , 3 , 6 ) = 公約数( 18 と 24 の公約数は 1 , 2 , 3 , 6 )である事が確認できました。
「 最大公約数が見つかれば、公約数が分かる 」これは大事なポイントです。
前回のおさらい( 最大公約数の見つけ方 )
そして、最大公約数を見つけるには「 素因数分解 」を使えば良いのでした。おさらいとして書いておきます。
例えば、18 と 24 の最大公約数を求める場合、18 と 24 をそれぞれ素因数分解します。
\(18=2\times3^2\) \(24=2^3\times3\) よって「 18 = 2×3×3 」「 24 = 2×2×2×3 」であり、
「 2×3 」が共通しています( 共通した素因数の積 )。これが最大公約数( 2×3 = 6 )でした。
これが分数の場合だったら、\(\displaystyle\frac{18}{24}=\displaystyle\frac{2\times3^2}{2^3\times3}\) と分子と分母をそれぞれ素因数分解し、
\(\displaystyle\frac{2\times3\times3}{2\times2\times2\times3}=\displaystyle\frac{2\times3}{2\times3}\times\displaystyle\frac{3}{2\times2}\) となり、
つまり、\(1\times\displaystyle\frac{3}{4}\) のように「 1 の変形 」として取り出せる部分( 2×3 )が最大公約数となっています。
ちなみに、残った \(\displaystyle\frac{3}{4}\) を「 既約分数( 約分された分数 ) 」と言い、この「 3 と 4 」の関係を「 互いに素 」と言うのでした。
ユークリッドの互除法
大きな数の最大公約数を、最も手際よく求める「 ユークリッドの互除法 」という方法があります。
これは「 割られる数と割る数の最大公約数 = 割る数と余りの最大公約数 」というルールを利用した方法です。
例えば、( 1649 , 221 )の最大公約数を求めるなら、数の小さい方で割っていきます。
1649 ÷ 221 = 7 … 102 となります。ここで「 割る数 」と「 余り 」に注目して、割る数を余りで割ります( 小さい方で割る )。
221 ÷ 102 = 2 … 17 同様に割る数を余りで割ると、102 ÷ 17 = 6 と割り切れました。
この割り切れた時( 余りが 0 になった時 )の「 割る数 」が「 最大公約数 」となっています。
つまり、この場合「 17 」で割り切れたので「 最大公約数は 17 」となります。
このような、確実な結果が導かれる算法を「 アルゴリズム 」と言います。
この「 ユークリッドの互除法 」は最強のアルゴリズムと言われ、史上最古のアルゴリズムとされています。
分数の加減と素因数分解
分数の足し算と引き算を素因数分解で見てみます。
例えば、\(\displaystyle\frac{1}{20}+\frac{1}{30}\) この分母をそれぞれ素因数分解すると、
\(\displaystyle\frac{1}{2^2\times5}+\frac{1}{2\times3\times5}\) となり、通分( 分母を揃える )するために、分母同士を比べると、
( \(2^2\times5\) )には( ×3 )が 1 つ足りなくて、( \(2\times3\times5\) )には( ×2 )が 1 つ足りない事がわかります。なのでこれらをそれぞれ補うと、
分母は「 \(2^2\times3\times5\) 」で揃える事になります。
よって、\(\displaystyle\frac{1}{2^2\times5}\) には \(\displaystyle\frac{3}{3}\) を、\(\displaystyle\frac{1}{2\times3\times5}\) には \(\displaystyle\frac{2}{2}\) を掛ければ良い事がわかります( 分子と分母に同じ数をかけるので )。
つまり、\(\displaystyle\frac{3}{2^2\times3\times5}+\frac{2}{2^2\times3\times5}\) このように上記の足し算は変形できる事になります。
あとはこれを解いて、\(\displaystyle\frac{5}{2^2\times3\times5}=\displaystyle\frac{1}{2^2\times3}=\displaystyle\frac{1}{12}\) となります。
引き算も同様ですね。
倍数と公倍数のしくみ
倍数は無限に存在するので「 最大はありません 」。
例えば、18 と 24 のそれぞれの倍数を見てみると、
18 の倍数は「 18 , 36 , 54 , 72 , 90 , … 」となっていき、これはつまり九九でいう「 18 の段 」というイメージです。
24 の倍数は「 24 , 48 , 72 , 96 , … 」となっていき、九九の「 24 の段 」というイメージです。
そして、18 と 24 の公倍数( 共通する倍数 )は、最小公倍数 72 の倍数( 72 , 144 , 216 , … )となっています。
つまり「 最小公倍数の倍数 = 公倍数 」という事です。
最小公倍数とは「 2 つの数のどちらにも変身できるようなもの 」というイメージです。
その変身道具として、それぞれの数の「 素因数 」を「 必要最小限 」だけ持っているのです。
\(18=2\times3^2\) つまり 18 になるには「 2 , 3 , 3 」が必要であり( 2 が 1 個 , 3 が 2 個 )、
同様に、\(24=2^3\times3\) なので 24 になるには「 2 , 2 , 2 , 3 」が必要( 2 が 3 個 , 3 が 1 個 )となります。
よって「 2 , 2 , 2 , 3 , 3 」を持っていれば( 2 を 3 個 , 3 を 2 個 )、どちらにも対応できる事になります。
この必要最小限だけの数「 \(2^3\times3^2=72\) 」が最小公倍数という事です。
最小公倍数と素因数分解
18 と 24 と最小公倍数 72 の関係を、素因数分解で細かく見てみると、
18 = 2×3×3 24 = 2×2×2×3 この両者に共通する部分( 2×3 )を「 1 つのもの 」として数えて、これにそれぞれの残りの素因数を掛けたものが最小公倍数となっています。
よって「 2×3×3×2×2 = 72 ( 最小公倍数 ) 」という事です。
最大公約数と最小公倍数
以上までの、最大公約数と最小公倍数のしくみから、
実は、18 と 24 の積は「 最大公約数 × 最小公倍数 」となっているのです。
確認してみましょう。18 = 2×3×3 24 = 2×2×2×3 なので、
18 × 24 = ( 2×3×3 )×( 2×2×2×3 ) = 2×2×2×2×3×3×3 = ( 2×3 )×( 2×2×2×3×3 ) となっています。
そして、( 2×3 )は最大公約数 6 の事であり、( 2×2×2×3×3 )は最小公倍数 72 の事です。
よって、18 × 24 = 6 × 72 である事になります。当然これは 18 と 24 以外でも同様です。
「 2 数の積 = 最大公約数 × 最小公倍数 」という関係になっているのです。
この関係はとても重要です。
まとめ
求める手順( 流れ )を最後にまとめておきます。
- 「 素因数分解 」or「 ユークリッドの互除法 」で「 最大公約数( 共通する素因数の積 ) 」を求める。
- 「 約数の総和を求める式 」を使い「 最大公約数の約数 」を求める。これで「 公約数 」もわかる。
- 素因数分解でわかった「 各素因数 」or「 2 数の積 = 最大公約数 × 最小公倍数 」の関係から「 最小公倍数 」を求める。これで「 公倍数 」もわかる。
例として 18 と 24 で実際にやってみると、
\(18=2\times3^2\) \(24=2^3\times3\) と素因数分解します。ここから最大公約数「 2×3 = 6 」がわかりました。
この最大公約数 6 の約数は「 1 , 2 , 3 , 6 」です。数が大きい場合は「 約数の総和を求める式 」を使いましょう。
これにより 18 と 24 の公約数も「 1 , 2 , 3 , 6 」とわかりました。
上記の 18 と 24 の素因数分解の結果から、最小公倍数は 「 ( 2×3 )×( 2×2×3 ) = 72 」。( 共通する部分を 1 つとして数えて、残りの素因数を掛けたものが最小公倍数 )
または、18×24 = 432 なので「 2 数の積 = 最大公約数 × 最小公倍数 」の関係を使って「 432 ÷ 6 = 72 」と出しても良いです。
これにより 18 と 24 の公倍数が「 72 の倍数 」である事がわかりました。
「 分数の場合 」なら「 約分には最大公約数 」「 通分には最小公倍数 」が利用できます。
あとがき
「 素因数分解の集大成 」という事で、とても濃い内容になりました。
でもここまで来る事で、今まで学んだ知識は、全てつながっていたのだと分かりました。
小学校で学ぶ「 約数 , 倍数 , 分数( 約分 通分 ) , 公約数 , 公倍数 」は「 素因数分解 」という軸で全てつながったものでした。
「 約数の個数と総和 」は高校で学ぶような内容ですが、指数と素因数分解がわかれば簡単な仕組みなので、一緒にまとめておきました。
「 最大公約数の約数 = 公約数 」と「 最小公倍数の倍数 = 公倍数 」という関係。
「 2 数の積 = 最大公約数 × 最小公倍数 」この関係があるから、公約数と公倍数はつながっているとも言えます。約数と倍数は表裏一体の関係ですからね。前々回( 約数と倍数 素数と素因数分解 )の約数と倍数より。
全 10 回にわたり書いてきました「 数の入門と算数 」シリーズも、何とか無事に終了する事ができました。
このシリーズは、初めて「 数式を書く 」という事でなかなか大変な事もありましたが、その分たくさん学ぶ事もありました。
そして、大嫌いだった算数や数学を面白いと思うように成れた事が、何より嬉しかったです。
知らない事を、知って学んで覚えていくのは、やっぱり自分は好きなのだなと実感しました。
これからもマイペースに、学んだ事を記していきたいと思います。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。