第 5 回のテーマは「 割合 , 百分率 , 比の概念 」です。
割り算とは切っても切れない関係である「 割合 」についての話です。
割合は、きちんと整理しながら理解しておかないと、頭がごちゃごちゃになりやすい分野だと思います。
自分は小学生の頃、この辺りで算数が解らなくなり、嫌いになった記憶があります。
なるべく丁寧に、様々な具体例や実用例を使って書いていきたいと思います。
目次
割合とは?
割合とは「 比べられる量 」が「 元にする量 」の何倍にあたるかを表した数です。
つまり割合とは「 何倍なのか 」を表すものです。そしてこれは「 数や量を比べる手段 」になります。
式で表すと「 比べられる量 」÷「 元にする量 」=「 割合 」となります。
この式から「 元にする量 」×「 割合 」=「 比べられる量 」が成立し、
また「 比べられる量 」÷「 割合 」=「 元にする量 」も成立すると言えます。
「 元にする 」とは「 1 倍とする( 基準とする ) 」という意味です。例えば、3 を元にするなら「 3 を基準とする( 3 から見ると ) 」ということです。
百分率( % )の考え方
「 小数の割合 」を 100倍すると「 百分率( % )」になります。
これは「 元にする量( 1 倍 )」を「 100 % 」とする考え方です。例えば、割合が 0.3 なら 0.3 × 100 = 30 で「 30 % 」です。
百分率を 100で割ると( もしくは \(\displaystyle\frac{1}{100}\) 倍や 0.01 倍しても一緒 )、小数の割合に戻ります。30 %なら 30 ÷ 100 = 0.3 で「 0.3 倍 」に戻ります。
なので、「 小数の割合で 0.01 倍 」のことを「 百分率では 1 % 」と表しています。
「 歩合 」の考え方
小数の割合は「 歩合 」に変換して使われることもあります。
歩合とは「 元にする量( 1 倍 )」を「 10 割 」とする考え方です。
0.1 倍 →「 1 割 」 0.01 倍 →「1 分( ぶ ) 」 0.001 倍 →「 1 厘( りん ) 」と呼んでいます。
例えば、0.634 なら「 6 割 3 分 4 厘 」となります。
百分率も歩合も「 割合 」
百分率も歩合も「 割合 」です。表し方が違うだけです。
例えば、
- 30 人( 元にする量 )の 0.6 倍は 18 人( 比べられる量 )
- 30 人( 元にする量 )の 60 %は 18 人( 比べられる量 )
- 30 人( 元にする量 )の 6 割は 18 人( 比べられる量 )
このように「 全て同じ意味 」になります。
具体例
例えば、父の体重( 60 kg )を「 元にする量 」、子の体重( 30 kg )を「 比べられる量 」とした時の割合なら、
父の体重から見る( 父の体重を基準とする )と、子の体重は何倍にあたるのか。という意味なので、
「 比べられる量 」÷「 元にする量 」=「 割合 」から、30 ÷ 60 = 0.5 倍、または \(\displaystyle\frac{30}{60}=\frac{1}{2}\) 倍。つまり「 5 割 , 50 % , 半分 」となります。
なので逆に、子の体重( 30 kg )を「 元にする量 」にして、父の体重( 60 kg )を「 比べられる量 」にした時の割合なら、
子の体重から見る( 子の体重を基準とする )と、父の体重は何倍にあたるのか。という意味なので、
60 ÷ 30 = 2 倍、\(\displaystyle\frac{60}{30}=2\) 倍。つまり「 20 割 , 200 % 」となります。
割合の具体例や実用例
割合は、具体例や実用例を見ていく方が理解が深まると思うので、いくつか書いておきたいと思います。
「 濃度 」の計算
[例題] 12 %( 割合 )の食塩水 50 g( 元にする量 )の食塩の量( 比べられる量 )を求める場合、この 12 %という割合は、食塩水 50 g を元にした割合です。
つまり、「 食塩水 50 g を 0.12 倍( 12 % )した食塩が入った水 」のことです。
「 元にする量 」×「 割合 」=「 比べられる量 」の式を使い、50 × 0.12 = 6 よって、食塩の量は「 6 g 」となります。
[例題] 15 %の食塩水 200 g に水 50 g を加えると何%の食塩水になるかを求める場合、まず、15 %( 割合 )の食塩水 200 g( 元にする量 )の食塩の量( 比べられる量 )を求めます。
上記の式を使い、200 × 0.15 = 30 となり、食塩の量が「 30 g 」と分かりました。
最終的な食塩水の量は 250 g( 元の食塩水 200 g + 加えた水 50 g )で、食塩の量が 30 g なので、この時の割合を求めます。
「 比べられる量 」÷「 元にする量 」=「 割合 」を使い、30 ÷ 250 = 0.12 よって割合は「 12 % 」となります。
「 原価 , 定価 , 売値 , 利益 」の計算
原価 =「 仕入れ値 」、定価 =「 原価 + 利益 」、売値 =「 定価 − 値引き額 」、利益 =「 売値 − 原価 」となっています。
他にも、値引率とは、定価を「 元にする量 」とした時の、値引き額( 比べられる量 )の割合です。「 〜割引き , 〜%OFF 」と言われるものです。
利益率とは、原価を「 元にする量 」とした時の、利益( 比べられる量 )の割合です。
また、\(売値\lt原価\) の時に「 原価 − 売値 = 損失額 」となります。
[例題] 原価 2000 円の商品に、2 割の利益をのせて定価を決めたが、売れなかったので定価の 1 割引きで売った。この時のそれぞれの値は?まず、原価 2000 円の商品に 2 割の利益をのせた「 定価 」を求めます。これは、原価に、原価の 0.2 倍した金額( 利益 )を、足したものが「 定価 」という意味なので、
2000 + ( 2000 × 0.2 ) = 2000 + 400 = 2400 円。これが定価です。
この計算は「 原価を 1 倍とした時、それの 0.2 倍を、足したものが定価 」という意味なので、「 1 + 0.2 = 1.2 (倍) 」つまり、「 原価の 1.2 倍が定価である 」と言えます。
よって、2000 × ( 1 + 0.2 ) = 2000 × 1.2 = 2400 円。このように求めることもできます。
次に、「 定価の 1 割引で売った 」という実際の「 売値 」を求めます。これは、定価から、定価を 0.1 倍した金額( 値引き額 )を、引いたものが「 売値 」という意味なので、
2400 − ( 2400 × 0.1 ) = 2400 − 240 = 2160 円。これが売値です。
この計算も「 定価を 1 倍とした時、その 0.1 倍を、引いたものが売値 」という意味なので、「 1 − 0.1 = 0.9 (倍) 」つまり、「 定価の 0.9 倍が売値である 」と言えます。
よって、2400 × ( 1 − 0.1 ) = 2400 × 0.9 = 2160 円と求めることができます。
原価 , 定価 , 売値が分かったので「 利益 」を求めます。
「 売値 − 原価 = 利益 」なので、2160 − 2000 = 160 円。これが利益です。
ついでに「 利益率 」も求めておきましょう。「 利益( 比べられる量 ) 」÷「 原価( 元にする量 ) 」=「 利益率 」なので、
160 ÷ 2000 = 0.08 (倍) = 8 %となります。つまり、この原価 2000 円の商品は「 利益率 8 %の商品である 」ということです。
円周率は「 百分率ではない 」
余談ですが、円周率( 3.14… )は率と書いていますが、「 百分率ではありません 」。なので「 % 」では表しません。
円周率とは「 円周( 比べられる量 )が、直径( 元にする量 )の何倍になっているかを表す割合 」です。
円周( 比べられる量 ) ÷ 直径( 元にする量 ) = 円周率( 割合 )という関係になっています。
円周率はあくまでも「 割合 」であり、割合の基本「 何倍 」という意味です。( 直径の何倍が円周なのかという事 )
直径 × 円周率 = 円周 なので、円周率を「 3.14 」とすると「 直径 × 3.14 = 円周 」 という、おなじみの公式になるわけです。
応用問題
ある商品を、値引率 15 %で売ると 600 円の利益になり、値引率 20 %で売ると 200 円の利益になる。この時の商品の定価、値引率 15 %時の売値、原価を求める場合。
[手順 1]、求める「 定価 」を「 \(x\) 」として、15 %と 20 %それぞれの場合の「 売値 」を式で表します。数学は「 式同士や文字式( アルファベット等を使った式 ) 」での、掛け算の記号( × )は省略できるので、以下の式は省略している所もあります。
15 %値引時の売値は、\(x-\left(x\times0.15\right)\) です。これを分配法則を使い「 \(x\) 」でくくると、
\(x\left(1-0.15\right)=0.85x\) となります。
この \(0.85x\) の出し方は、15 %の値引きなので \(x\left(1-0.15\right)\) とやって、いきなり \(0.85x\) と出しても OK です。
同様に、20 %値引時の売値は、\(x-\left(x\times0.2\right)\) なので、また「 \(x\) 」でくくると、
\(x\left(1-0.2\right)=0.8x\) となります。
この \(0.8x\) の出し方も、20 %の値引きなので \(x\left(1-0.2\right)\) とやって、いきなり \(0.8x\) と出しても OK です。
[手順 2]、商品の原価は変わらないので、この 2 つの「 売値の差 」が「 利益の差 」になっています。これを数式で表し「 定価 」を求めます。\(0.85x-0.8x=600-200\) なので、これを \(x\) でくくると、\(x\left(0.85-0.8\right)=400\) です。
これを解くと、\(0.05x=400\) なので、両辺を「 0.05 」で割ると \(x=400\div0.05=8000\) よって 8000 円となります。
[手順 3]、定価が分かったので、あとはこれを 15 %引きの売値の式に「 代入( 文字の代わりに数字や式を入れる) 」すれば、「 売値 」が分かります。\(0.85x\) の \(x\) に 8000( 定価 )を代入すると、0.85 × 8000 = 6800 円です。
[手順 4]、これで 15 %値引時の「 売値 」と「 利益 」が分かったので、最後に「 原価 」を求めます。「 売値 」−「 利益 」=「 原価 」なので、6800 − 600 = 6200 円。これが原価となります。
比の概念
例えば、3 ( 比べられる量 )と 5 ( 元にする量 )の割合を「 3 : 5 」と表します。( 3 対 5 と読みます)
このように表された割合を「 比 」といいます。
「 3 : 5 」とは「 3 ÷ 5 」のことであり、これを「 比の値 」と呼びます。
そして、\(3\div5=\displaystyle\frac{3}{5}\) と分数で表せます。
比の性質
「 A : B 」のとき「 A と B に同じ数を掛けても( 同じ数で割っても ) 比は等しいまま 」です。
この事から、 A : B = \(\displaystyle\frac{A}{B}\) なので、分子と分母に同じ数を掛けても( 同じ数で割っても ) 大きさは変わらない事が成立します。
比例式
比例式「 A : B = C : D 」のとき、B と C を「 内項 」 A と D を「 外項 」といいます。
「 内項の積と外項の積は等しい 」という性質があるので、A × D = B × C ということです。( 文字式なので普通は×を省略して AD = BC と書きます)
この事の「 証明 」を書くと、A : B = C : D は \(\displaystyle\frac{A}{B}=\frac{C}{D}\) であります。
この両辺に ( B × D ) を掛けると、\(\displaystyle\frac{A}{B}\times B\times D=\frac{C}{D}\times B\times D\)となります。
そして結果的に、A × D = B × C となっています。
比例と反比例
例えば、2 つの量 \(x\) と \(y\) があり、\(x\) が 2 倍、3 倍 … になると、それに伴い \(y\) も 2 倍、3 倍 … になるとき、「 \(y\) は \(x\) に比例する 」と言います。
式で表すと「 \(y=ax\) 」です。\(a\) は定数( その問題などで、あらかじめ決められた数 )です。
逆に、\(x\) が 2 倍、3 倍 … になると、\(y\) が \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍、\(\displaystyle\frac{1}{3}\) 倍 … になるとき、「 \(y\) は \(x\) に反比例する 」と言います。
式で表すと「 \(y=a\times\displaystyle\frac{1}{x}=\frac{a}{x}\) 」です。同様に \(a\) は定数です。
反比例の性質
例えば、\(y\) が \(x\) に反比例するとき、\(y=3\) \(x=2\) のときの反比例の式を求める場合、
反比例の式は「 \(y=\displaystyle\frac{a}{x}\) 」なので、この式に \(x\) と \(y\) の値を代入します。
すると、\(3=\displaystyle\frac{a}{2}\) となり、両辺に 2 を掛けると「 \(a=6\) 」と分かりました。
よって反比例の式は「 \(y=\displaystyle\frac{6}{x}\) 」となります。これは「 \(y=6\div x\) 」とも表せます。
反比例での \(x\) と \(y\) は「 片方が一番大きいとき、もう一方が一番小さくなる 」という関係になっています。
これは「 \(x\) と \(y\) の積が常に一定である 」からです。
上記の例だと、定数( \(a\) )が 6 の反比例の式なので「 \(y=\displaystyle\frac{6}{x}\) 」です。
この式に \(x\) の値を入れていくと、
- \(x=2\) だと \(y=\displaystyle\frac{6}{2}\) なので、 \(x\times y=2\times\displaystyle\frac{6}{2}=6\)
- \(x=3\) だと \(y=\displaystyle\frac{6}{3}\) なので、 \(x\times y=3\times\displaystyle\frac{6}{3}=6\)
- \(x=4\) だと \(y=\displaystyle\frac{6}{4}\) なので、 \(x\times y=4\times\displaystyle\frac{6}{4}=6\)
このように、 \(x\) と \(y\) の積が「 定数の数値で一定 」になっています。
これは、 \(x\) と \(y\) が「 逆数の関係 」になっているからです。
逆数とは「 分子と分母を逆にした数 」のことであり、この逆数の関係にあるもの同士は、 掛けたら 1 になります。
2 の逆数は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) で、\(2\times\displaystyle\frac{1}{2}=1\) となり、 3 の逆数は \(\displaystyle\frac{1}{3}\) で、\(3\times\displaystyle\frac{1}{3}=1\) となります。
厳密には、\(a=1\) の時でないと、逆数の要件 \(x\times y=1\) は成り立ちませんが、上記の例から \(x\times y\) により、\(x\) と「 \(y\) の分母 」が相殺され、\(a\) が残ることを見つけました。
よって反比例の式は「 \(a=xy\) 」と表すこともできるというわけです。
もちろん、こんな事をしなくても、反比例の式が \(y=\displaystyle\frac{a}{x}\) なので、ここから \(a=xy\) といきなり出しても構いません。
ただ、このように導き方を理屈で解っておくと、より深く理解できると思うので書いておきました。
あとがき
自分が算数を嫌いになったきっかけである「 割合 , 比例 」の分野だったので、丁寧に、詳しく、と意識していたら、大変な長文になってしまいました。
それでも何とか、「 割合 , 百分率 , 比例 」における大事なポイントの部分は、最低限まとめられたと思います。
この記事が割合や比例を理解する、何か一助となれば幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。