第 8 回のテーマは「 血液と腎臓&消化吸収の流れ 」です。
前回( 肺と心臓のしくみ )の続きとなる「 人体の話 」です。
今回は「 血液の成分や働き , リンパ液 , 血液と腎臓の関係 , 消化吸収の流れ , 消化液と酵素 」といった事を書いていきたいと思います。
目次
血液の成分と働き
血液は「 赤血球 , 白血球 , 血小板 」という固形物質と「 血漿( けっしょう ) 」という透明の液体で構成されています。
赤血球は赤い色をした中央がくぼんだ円盤状の細胞であり、酸素と二酸化炭素を運びます。
白血球は白っぽい色をしており、免疫作用( 体内に侵入した異物や病原体などを分解し体を守る作用 )を持ちます。
血小板は血管が傷ついて出血したときに、血栓( かさぶた )を作って、血を固め傷口を塞いで止血します。
血漿は黄色味を帯びた透明な液体で、栄養分を全身の細胞に届けたり、二酸化炭素や老廃物を肺や腎臓に運んだりしています。
また血漿は「 血液の液体部分 」なので血漿が「 赤血球 , 白血球 , 血小板 」を運んでいます。
よって血漿はこれらと連携して働くような特徴を持ちます。( 赤血球の二酸化炭素の運搬 , 白血球の病原体の排除 , 血小板の血栓を作って傷口を塞ぐなど )
血液の色
動脈と肺静脈を流れる動脈血( 酸素が多い )は鮮やかな赤色しており、静脈と肺動脈を流れる静脈血( 二酸化炭素が多い )の色は赤黒いです。
動脈と静脈 , 肺動脈と肺静脈 , 動脈血と静脈血については前回の「 肺と心臓のしくみ 」で解説しております。
この血液の色の違いは「 酸素の量 」が関係しています。
赤血球に含まれる酸素を運ぶ「 ヘモグロビン 」という物質は、酸素が多いと鮮やかな赤になり、少ないと赤黒くなるからです。
また、そもそも血液が赤い理由は「 ヘモグロビンの色が赤 」だからです。
ちなみにイカや甲殻類( エビなど )の血液は青色に見えます。( ヘモグロビンでは無い物質 )
ヘモグロビンと鉄と酸素
血液中の赤血球に含まれる「 ヘモグロビン 」は酸素と結びつきやすく、酸素を運ぶ役割をしています。
ヘモグロビンには「 鉄 」が含まれており、鉄は「 ヘモグロビンの材料 」でもあります。
よく「 貧血 」にレバーやほうれん草など鉄分が多いものを勧めますが、あれはヘモグロビン( 鉄 )が少なくなることで、細胞に十分な酸素を運べず「 細胞の酸欠状態 」を引き起こしてしまうからです。
この状態が貧血なので鉄分は血液に欠かせないと言われるのです。( 通常の貧血は血が足りないわけでは無いという事 )
血液とリンパ液
体内は血液の他に「 リンパ液 」という液体も流れています。
リンパ管を流れるリンパ液は「 白い血液 」と呼ばれ、静脈では回収できない「 大きな老廃物 , 危険な細菌やウイルス , 不要なタンパクや脂質や水分などを回収 」しています。
いわば「 体内の下水道 」のような役割です。リンパ液は見た目も成分も「 血漿に近い 」です。
リンパ管には所々「 リンパ節 」という場所があり、ここに「 リンパ球 」という白血球( 免疫細胞 )の一種( T 細胞 , B 細胞 , NK 細胞 )が存在して免疫作用を果たしています。
風邪の時など「 リンパ節が腫れる 」ことがあるのは、ここでリンパ球が「 病原菌と戦っている 」からです。例えば風邪で扁桃腺( へんとうせん , リンパ節 )が腫れるなど。
このように免疫細胞が異物を破壊してくれるおかげで、リンパ液は無害な液体となって流れていきます。
そして最終的にリンパ液は、鎖骨あたりの「 静脈角 」という所から「 静脈に流れ込み 」血液循環の中で「 腎臓によって濾過(ろか) 」され、「 不要なものは尿として体外に排出 」されます。
リンパの役目は「 体を病気から守る免疫作用 」と「 大きな不要物などを回収 , 分解する作用 」です。
血液が約 40 〜 50 秒ほどで全身を巡り心臓に戻ってくるのに対して、リンパ液が全身の細胞から不要物を回収して静脈角に到達するには「 12時間 〜 24時間 」もかかると言われています。
リンパの流れは「 筋肉のポンプ作用 」によって流れていくので、運動( 歩いたりなど )して全身の血流を良くすると流れがスムーズになります。
リンパの流れが悪くなると「 免疫力が下がり病気になりやすく 」なります。また「 浮腫み( むくみ ) 」やすくもなります。
以上のような「 血液やリンパ液など 」の体液を「 体内で循環させる 」働きをする器官を「 循環器 」と言います。
「 動脈血( 酸素が多い ) 」は「 心臓のポンプ作用 」によって運ばれており、
「 静脈血( 二酸化炭素が多い ) , リンパ液 」は「 筋肉などのポンプ作用 」によって運ばれています。
腎臓の働き
腎臓は腰のやや上あたりに左右 1 つずつあり、「 血液から老廃物などをこし取って( 血液を濾過して ) 」キレイな血液を静脈へ流しています。
「 こし取った老廃物 」は「 余分な水分 」とともに、「 尿管 」を通り「 膀胱 」へ送られ「 尿 」になります。
「 血液中の不要物を処理する 」のが腎臓。つまり腎臓は「 血液の浄化装置 」ということです。
またこの働きにより「 体内の水分量や塩分量、そして体液の濃度も一定に保たれています 」
腎臓で濾過される「 原尿( 尿の素となる体液 ) 」の量は「 1 日に 150ℓ」ほどにもなり、その中で膀胱に送られ「 尿 」となって排出されるのは「 1.5ℓ」ほどです。
「 原尿は腎臓の中に溜まり、尿は膀胱の中に溜まっている 」というイメージです。
つまり腎臓は「 大量の水分( 原尿 ) 」を抱えています。なので腎臓は「 潤いの臓器 」と呼ばれることもあります。
腎臓が正常に働かなくなると、血液中の老廃物 , 有害物質 , 余分な水分などがキチンと排出できないので、命の危険があります。( 尿が出ないと命にかかわる )
その場合に現状で行われているのが「 人工透析( 透析とも呼ばれる ) 」です。
人工透析は「 人工的に腎臓機能の代わりをする 」ことです。つまり体内で腎臓によって行われていた「 老廃物の排出 , 水分量塩分量の調整 , 体液濃度の調整など 」を機械を使って体外で行います。
タンパク質の多い食事は腎臓に負担を掛けるので注意しましょう。
消化吸収の流れ
体の中で食べ物を吸収しやすいように変化させることを「 消化 」と言います。その後、消化によって生じた栄養分を体内へ吸収( 取り込む )していきます。
口の中に入った食べ物は、噛むことで細かく砕かれ「 唾液 」と混ざっていきます。
唾液には食べ物( デンプンなど )を体に吸収されやすい「 糖 」に変える働きがあり、このような消化作用のある液体を「 消化液 」と言います。
唾液の中には「 アミラーゼ 」という「 消化酵素( 消化の働きをする体内物質 ) 」があり、このアミラーゼがデンプンを糖( 麦芽糖 )に変化させます。
なので炭水化物などデンプンを多く含む食べ物( お米など )を、しばらく噛んでいると糖が増えて甘く感じるようになります。
そして食べ物は口から食道を通って、胃におりて胃液( 消化液 )で細かく分解され、そのあと小腸で最終的な消化と栄養分の吸収が行われ、不要な物は大腸に送られて便を作り肛門から排出されます。
このように食べ物が通る管( 道 )を「 消化管( 口 , のど , 食道 , 胃 , 小腸 , 大腸 ) 」といい「 食べ物の消化・吸収 」を行なっています。
ちなみに食道は食べ物が入ってくると「 ぜんどう運動 」という筋肉の収縮によって起きる波打つような動きで、食べ物を胃に送っています。
なので人間は逆立ちしたままでも、食べ物を食べることができます。( 非常に食べにくいですが )
消化液の働き
消化管からは消化液が出ています。消化液には唾液 , 胃液の他に、膵臓(すいぞう)で作られ十二指腸( 小腸 )から出る「 膵液 」、肝臓で作られ胆嚢(たんのう)で蓄えられ十二指腸から出る「 胆汁 」など様々な種類があります。
消化管に、これら消化液を作る臓器( 膵臓 , 肝臓 , 胆嚢 )を含めたものを「 消化器官 」と言います。
消化器官により「 炭水化物はブドウ糖 」まで「 タンパク質はアミノ酸 」まで「 脂質は脂肪酸とグリセリン 」まで分解されていきます。
またそれぞれの消化液は働きが決まっています。
胃液は「 主にタンパク質の消化 , 殺菌 , 温度調節( 熱い物や冷たい物がそのまま腸に行かないように ) 」を行なっています。
膵液は「 炭水化物 , タンパク質 , 脂質の消化 」を行い、胆汁は「 脂質の消化と吸収を助けています 」
酵素の働き
消化液に含まれる消化酵素( 消化の働きをする体内物質 )は「 体温ぐらいの温度 」が最も良く働きます。( 温度が低すぎても高すぎても働かない )
酵素( 体内で起こる化学反応を助ける物質 )は「 タンパク質 」で出来ているので「 熱によって破壊 」されてしまいます。( 約 50 ℃で破壊される )
これは「 食物酵素( 動植物に含まれる自然界の酵素 ) 」も同じです。また一度壊れた酵素は温度を下げても元には戻りません。
逆に温度を下げて冷やした場合は、酵素は壊れず、働きが止まるだけなので、温度を上げると働くようになります。
ちなみに人体で作られる酵素には「 代謝酵素 」という消化酵素で得た栄養分を使い「 細胞の再生 , 呼吸や運動 , 免疫力や自然治癒力などを維持させる酵素 」もあります。
よって体内の代謝酵素をしっかりと働かせ、健康体を維持するためにも「 体内を冷やすこと( 体温以下の冷たい飲み物やアイスを食べるなど ) 」はなるべく避けた方が良いと思います。
余談「 こんにゃくとダイエット 」
こんにゃくは「 芋 」から作られており、大部分は「 水 」で残りは「 グルコマンナン 」という炭水化物( 食物繊維 )です。
しかし人間はこのグルコマンナンを消化する酵素を持っていないので、食べても吸収できず、栄養分になりません。
またグルコマンナンには、胃の中で水を吸って何十倍にも膨れるという性質があります。
以上の事から、こんにゃくは芋から作られて炭水化物であるのに、非常に低いカロリー( エネルギーの単位 )であり、満腹感も得られるので「 ダイエットに向く 」と言われているのです。
ちなみにグルコマンナンのように「 人の消化酵素では消化されにくい炭水化物 」を「 食物繊維 」と呼んでいます。
食物繊維は腸内細菌の「 善玉菌のエサ 」になるので、腸内環境を整える意味では大切なものと言えます。( 腸内環境を整えることは健康体に繋がる )
あとがき
血液もこうやって詳しく見てみると、シンプルな構造でありながら、非常に良く出来た仕組みだと感じました。
血液が直接的に細胞を生かしています。( 血液が細胞に栄養を与え、細胞の不要物を回収し、病原体から細胞を守り、血管が切れたら傷口を塞いでいる )
そして「 白い血液 」と呼ばれるリンパ液の存在もすごいです。
体は「 免疫作用 , 老廃物の回収と分解 」に特化した器官も用意していました。静脈はあくまでも二酸化炭素の回収がメインというイメージです。
しかも静脈に到達するのが「 12〜24時間 」というのも驚きでした。それだけじっくりゆっくりと時間のかかる作業なのでしょう。
でもこの働きがあるからこそ、私たちの体は健康でいられるという事ですね。
そして静脈血 , リンパ液などによって、回収や分解された細胞の老廃物や不要物は、最終的に「 腎臓 」によって処理されて体外に排出されていきます。
「 血液の浄化装置 」と呼ばれるだけあって、腎臓によって老廃物などを排出できなければ、血液をキレイに保てません。
どんなにリンパ液が有害物質を分解してくれても、最終的に体外に排出できないと、血液は汚れて行ってしまいます。
また体内の塩分量 , 水分量 , 体液濃度なども調整できないので、その意味でも体内を健康に保てません。
だから腎臓が正常に機能せず、尿がキチンと排泄できないと命にかかわるという事でした。
食べ物の通り道( 消化管 )は 1 本の管という考え方はなかなかシンプルですね。
消化酵素による消化液の働き、そして消化液にはそれぞれ役割分担があるというのは面白いと感じました。
体内酵素には「 消化酵素 」と「 代謝酵素 」があるというのも勉強になりました。そしてこれは「 体温ぐらいが一番良く働く 」というのも覚えておきたい知識でした。
「 酵素はタンパク質で出来ている 」「 タンパク質は熱で壊れる 」「 冷やした場合は働きが止まる 」というのも大事な特徴だと感じました。
自分も体温以下の飲食はなるべく控えようと思います。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。