第 7 回のテーマは「 肺と心臓のしくみ 」です。
前回( 骨と筋肉&神経の働き )の続きとなる「 人体の話 」です。
今回は「 肺のつくりや呼吸 , 心臓のつくりと働き , 肺と心臓の関係 」といった事を書いていきたいと思います。
肺と呼吸
鼻や口から吸い込んだ空気は「 気管から気管支を通り、肺へ運ばれて 」いきます。
このような「 空気や息の出入り 」に関係する器官( 生きるための機能を有する部分 )を「 呼吸器官 」と言います。
肺は空気に含まれる酸素の一部を、血液の中に送り、代わりに体内で発生した不要な二酸化炭素を、血液から受け取ります。
そして受け取った二酸化炭素は、気管支 , 気管を通って鼻や口から吐き出されます。
なので吐く息( 空気 )には二酸化炭素が多く含まれるのです。一般的に二酸化炭素は空気中では 0.03 %ほどしか含まれていないのですが、吐く息には 3 〜 4 %ほど含まれています。
肺によって血液に入った酸素は、食べ物で得た栄養分とともに、血液に乗って心臓から全身の細胞に運ばれていきます。
全身の細胞では酸素と栄養分を使って、エネルギー( 生命活動の維持に必要な基礎代謝や体を動かす運動に必要な活動代謝の源 )が生み出されます。
そして同時に細胞から二酸化炭素が発生し、これが血液によって心臓を経由し、肺へ運ばれます。
このように「 肺で得た酸素を細胞が受け取り、代わりに発生した二酸化炭素を肺へ送る 」ことを「 内呼吸( 細胞呼吸 ) 」といい、
「 肺が空気中から酸素を取り入れ血液に送り、代わりに血液から二酸化炭素を受け取り、体外へ排出する 」ことを「 外呼吸( 換気 ) 」と言います。
つまり内呼吸とは「 細胞と血液の間でのガス交換( 酸素と二酸化炭素のやり取り ) 」を指し、
外呼吸とは「 肺と血液の間でのガス交換( 酸素と二酸化炭素のやり取り ) 」を指します。
内呼吸の元は外呼吸で生まれ、外呼吸で排出するものは内呼吸で生まれたものです。
このように内呼吸と外呼吸は表裏一体で繋がっています。
肺のつくり
肺は胸のあたりに左右 1 つずつあり、気管は肺の手前あたりで、二股(ふたまた)に分かれ「 気管支 」となっています。
左右それぞれの気管支の先は、肺の中で無数に細かく枝分かれしており、それらの先端にぶどうの房のような「 肺胞 」という小さな袋をつけています。
この無数の肺胞の集まりが、あの大きな「 肺 」を形成しています。
肺胞は網のようになった毛細血管( 全血管の 99 %を占め、動脈と静脈をつなぐ極細の血管 )に包まれており( 絡みついている )この部分で血液に酸素を渡し、二酸化炭素を受け取っています。
肺胞はぶどうの房のような形になっている事で、表面積が増え、酸素と二酸化炭素の交換が効率良く行われるようになっています。
大人の肺胞の数は 3 〜 5 億個と言われ、平らに広げると、学校の教室ぐらいの広さになると言われています。
ちなみに肺には筋肉が無いため、肺自身で空気を出し入れすることはできません。( 肺自身で呼吸はできない )
肺に空気を出し入れする働きをしているのが、肺を包んでいる「肋間筋( 肋骨と肋骨の間の筋肉 , 骨格筋 ) 」と胸と腹の間にある「 横隔膜( 骨格筋 ) 」です。
横隔膜は膜状の筋肉で、この膜が下がって、肋間筋により肋骨が広がることで、肺がふくらみ空気が吸い込まれます。
逆に、横隔膜が上がって、肋間筋により肋骨が縮むと、肺がしぼんで空気が吐き出されます。
余談ですが、横隔膜が痙攣( けいれん )すると「 しゃっくり 」になります。
心拍数と呼吸
呼吸は「 息を吸った時に体内の二酸化炭素が回収され、息を吐いた時に酸素が全身に巡ります 」
「 血液の酸欠( 酸素不足 ) 」が貧血などの原因なので、呼吸は「 吐く息を長く 」するのが大切と言われています。
運動時や緊張時など心拍数( 心臓の鼓動 )が上がった時は、吐く息を長くした深呼吸を繰り返すと、早めに落ち着きやすくなります。
健康体と鼻呼吸
人体は「 鼻で呼吸すること 」を前提に作られています。
空気中にはチリ , ホコリ , 花粉 , ウイルス , 細菌など様々な小さな異物が漂っています。
これらが体内に深く入らないように、絡め取り、ブロックしてくれているのが「 鼻 」です。
鼻の中は常に湿っており、毛もあり、粘液も分泌しています。
つまり「 温度調節もできる、加湿付き、空気清浄機 」のような役目を果たしているのです。
また鼻呼吸はダイエットにも効果的です。鼻呼吸は体にたくさんの酸素を送り込むので、血流も良くなり、内臓機能が活性化し、より多くのエネルギーが消費され、脂肪もよく燃焼されます。
つまり基礎代謝( 生きてるだけで、生命活動の維持として消費されるエネルギー )が上がり、痩せやすい体に成ります。
これが逆に口呼吸になると、上記の異物が直接のどの粘膜に当たってしまい、口内も乾燥し、冬であれば冷たい空気が入り病気になりやすい状態になってしまいます。
病原菌などの外敵に対し「 無防備なのが口呼吸 」と言えます。一説には「 人間が発症する病気の 7 割は口呼吸が原因 」とも言われています。
また口呼吸は「 虫歯や口臭の原因 」にもなると言われています。これは口内が乾燥して、唾液が減るからです。( 唾液は口内を潤し、殺菌作用を持ち、虫歯や口臭などを予防している )
そして唇も乾きやすくなるので、唇が荒れやすく、夏でもリップクリームが手離せなくなる人もいます。
また口呼吸では深い呼吸ができず、浅い呼吸になってしまいます。
すると全身の細胞にしっかりと酸素を届けることができません。特に体内で最も酸素を必要としているのが「 脳 」なので、脳の機能に大きく影響を及ぼします。
実際に鼻をつまんで口だけで呼吸をしてみると、次第に苦しくなってきます。風邪などで鼻がつまると、頭がぼーっとしてうまく働かない感じがしますし、体の調子も悪くなります。
個人的には鼻で深く息を吸うと、お腹の中まで深く空気が入ってくる感じがありますが、口で深く息を吸っても、のどの奥あたりで止まってしまうような感じがします。
動物の中で口呼吸をするのは「 人間だけ 」と言われますが、これは人間が「 言葉を話すから 」だと言います。
なので生まれたばかりの赤ちゃんは、口呼吸はしておらず、言葉を発するようになって口呼吸をし始めると、病気にもかかりやすくなると言われています。
このような口呼吸の習慣は「 呼吸器系 , アレルギー , 自己免疫系 , 精神的な病など 」様々な病気にかかるリスクが高くなると言われています。
呼吸のポイントは「 鼻呼吸 」と「 吐く息を長く 」です。この 2 つを意識するだけで、健康な体の土台ができます。( 心と体の健康&ダイエット )
人は「 1 日に約 2 万回も呼吸する 」と言われています。この毎日 2 万回の呼吸が「 鼻呼吸 or 口呼吸 」ではきっと大きな差が生まれていくのでしょう。
呼吸とは「 生物が生きる( 生命活動を維持する )ために、必要なエネルギーを生み出すはたらき 」です。
生き物は寝てる間も、絶え間なく呼吸をしています。これは常にいま必要なエネルギーを「 今 , この瞬間に 」作り続けているという事です。
寝ている時など、あまり活動するエネルギーを必要としない時は、静かでゆっくりの呼吸になり、
運動時など、活動エネルギーを多く必要とする時には、荒く速い呼吸になります。
だから生物は「 心臓 or 呼吸 」が止まると、死んでしまうのでしょう。この生きるためのエネルギーは溜めておく事ができないものという事です。
自律神経と鼻呼吸
鼻呼吸による深い呼吸は心臓の負担を和らげ、自律神経を整える( 高ぶり過ぎた交感神経を落ち着かせる )効果があります。
呼吸は自律神経( 自分ではコントロールできない動きを調節する神経 )が支配しているのですが、自律神経の中で唯一「 自分の意志でも調節 」する事ができます。
これは呼吸筋( 呼吸を行う筋肉 , 横隔膜や肋間筋など )が「 骨格筋 」である。つまり「 随意筋( 自分の意志で動かせる筋肉 ) 」だからです。
自律神経と骨格筋と随意筋については、前回( 骨と筋肉&神経の働き )の記事で解説しております。
なので鼻呼吸によって呼吸が整うと、それが自律神経に影響を与え、自律神経が整っていくという流れです。鼻呼吸はメンタル( 精神 )を安定させるとも言われています。
ストレスや緊張などで交感神経が高ぶってしまった時は、呼吸が浅く速くなり、心拍数も多くなります。
この場合、鼻呼吸で深呼吸を繰り返していくと、徐々に心が落ち着いていきやすくなります。イライラした時も深呼吸は効果的です。
また鼻での深呼吸は自然と腹式呼吸( 息を吸うとお腹がふくらみ、息を吐くとお腹がへこむ )になると思いますが、この腹式呼吸が自律神経を整えるのに効果的と言われています。
心臓と血液
「 肺で取り込んだ酸素 」と「 食べ物から得た栄養分 」は血液によって全身の細胞へ運ばれていきます。
この働きをしているのが「心臓 」です。
心臓は血管( 血液が通る管 )を使って血液を全身に巡らせています。これを「 血液循環 」と言います。
心臓の筋肉が規則的に収縮を繰り返すことで、ポンプのように血液を送っています。
この心臓の動きを「 拍動( 心拍 ) 」といい、これによって起こる血管の動きを「 脈拍 」と言います。
血管には「 動脈 , 静脈 , 毛細血管 」があります。
動脈は「 心臓から出ていく血液が流れる血管 」つまり「 動脈血( 動脈の血液 )は酸素が多い 」と言えます。( これから細胞に酸素と栄養分を送るので )
静脈は「 心臓へ戻ってくる血液が流れる血管 」つまり「 静脈血( 静脈の血液 )は二酸化炭素が多い 」と言えます。( 細胞から二酸化炭素と老廃物を回収してきたので )
また静脈には血液が逆流しないための弁( 静脈弁 )がついており、これによって「 一方通行の流れが保たれて 」います。
そして毛細血管とは「 動脈と静脈をつなぐ 1/100 mmほどの極細の血管 」で全身に張り巡らされています。(全血管の 99 %)
この毛細血管が細胞と直接つながり、酸素や栄養分を渡したり、二酸化炭素や老廃物を回収したりしています。
ちなみに皮膚の上から静脈が見える( 緑色に見える血管の筋 )のに動脈が見えないのは、静脈は皮膚のすぐ下を通っていますが、動脈は体の深いところを通っているからです。
心臓のつくり
心臓の内部は「 左心房 , 左心室 , 右心房 , 右心室 」の 4 つの部屋( 上の部屋を 房 、下の部屋を 室 という )で構成されています。
心臓でいう「 左 , 右 」とは、自分から自分の心臓を見た場合の向きです。( 自分から見て左手 , 右手というのと同じ )
「 心房 」は血液が戻ってくる場所です。左心房に「 肺からの血液が戻り 」右心房に「 全身を巡った血液が戻る 」
「 心室 」は血液を送り出す働きをしています。左心室は「 全身の細胞に血液を送り 」右心室は「 肺に血液を送る 」
心室は「 ポンプの役割 」をするので心房よりも大きいです。
また「 左心室 」は右心室より「 圧力が強く 」この強い圧力で全身の細胞に血液を送っています。この左心室の圧力が「 最高血圧 」にあたります。
左の 2 つの部屋( 左心房と左心室 )が「 肺からの血液を、動脈を通って全身に送る役割 」をしており、
右の 2 つの部屋( 右心房と右心室 )が「 静脈を通って全身から戻ってきた血液を、肺に送る役割 」をしています。
余談「 左心室の筋トレ 」
心臓は「 左心室 」が全身に血液を送る部屋なので、強い力を出すために筋肉が厚くなっています。
心臓が胸のほぼ真ん中にあるのに、左胸がドキドキするのは、この左心室が懸命に収縮して血液を送っているからです。
人は生まれてから生きていく中で、左心室の筋肉が徐々に鍛えられて、厚く大きく成長していきます。
いわば左胸がドキドキするのは、左心室が筋トレで鍛えられた結果であるとも言えます。
肺と心臓の関係
心臓は二酸化炭素を肺に送っています。そして心臓は酸素を肺から受け取っています。
この働きをしているのが、心臓と肺を繋ぐ「 肺動脈 」と「 肺静脈 」です。
肺動脈は「 心臓から出て肺へ流れる血管 」であり「 静脈血( 二酸化炭素が多い血液 ) 」が流れています。( 二酸化炭素を肺に送る血液 )
肺静脈は「 肺から出て心臓へ流れる血管 」であり「 動脈血( 酸素が多い血液 ) 」が流れています。( 酸素を心臓に送る血液 )
また「 心房と心室の間 」と「 左心室と大動脈( 心臓から出ている大きな動脈 )の間 」と「 右心室と肺動脈の間 」には逆流を防ぐための「 弁 」がついています。( 心臓は 4 つの弁がついている )
血液の流れを順番に見ていくと、
肺から動脈血( 酸素が多い )が肺静脈を通って、左心房→左心室→大動脈→動脈→毛細血管→細胞( 酸素を渡し二酸化炭素を受け取る , ここから静脈血に変わる )
細胞→毛細血管→静脈→大静脈( 心臓に繋がる大きな静脈 )→右心房→右心室、ここから静脈血は肺動脈を通って肺に戻り、二酸化炭素を排出し酸素を取り込み、また最初に戻ります。
このように肺と心臓は非常に密接な関係であり、お互いが助け合い協力して、命が保たれているのです。
余談ですが、人の血液の量は体重の約 1/13 倍と言われています。( 50kgで約3.8ℓ , 60kgで約4.6ℓ , 70kgで約5.4ℓ )
人間は全血液量の 20 %を短時間に失うと「 出血性ショック( 全身の臓器障害を引き起こす状態 ) 」に陥り、30 %以上で生命の危険に陥り、50 %を失うと心停止に陥ります。
献血(量)に体重制限があるのも、このように体重で血液量が違うからです。
あとがき
色々と細かく書いてしまったので、読みづらく複雑に感じてしまったかもしれませんが、理解してしまえば意外とシンプルな仕組みだと感じてもらえると思います。
病院などでは「 肺は呼吸器科 」「 心臓は循環器科 」と分けられているようですが、肺と心臓の構造を見てみると深い繋がりがある事がわかりました。
よく「 心肺 」と言われますが「 心臓による血液循環が停止 or 肺による呼吸が停止 」してしまうと、人間は死んでしまいます。( 息を引き取るという表現もある )
それぐらい肺と心臓の活動というのは、人間にとって大切な「 生命活動そのもの 」であるのでしょう。
その肺と心臓がやっていることが「 呼吸と血液循環 」でした。
「 呼吸によって酸素を取り入れ、その酸素を血液循環によって細胞に届ける 」という協力的な関係です。
そしてこの活動はほんの数分でも止まってしまうと生命は失われてしまうのです。
つまり細胞には常に酸素が必要であると同時に二酸化炭素の排出も必要であると言えます。
なので呼吸と血液循環をしっかりとスムーズに行う事が、健全な体作りに繋がります。
そこでポイントとなってくるのが「 呼吸の仕方 」でした。
「 鼻呼吸 」という動物本来の深い呼吸によって「 呼吸を整える 」ことで「 自律神経が整って 」結果的に血液循環や体内活動が正常に保たれていきます。
しかし現代人は口呼吸が多いと言われています。貧血の人が多いのも口呼吸によって、呼吸が浅くなってしまっているのが原因の 1 つかも知れません。( 貧血は細胞の酸欠状態 )
ストレス社会と呼ばれる現代を生きる人にとって「 鼻呼吸 」というのは強い味方になるのではないかと感じました。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。