第 5 回のテーマは「 小さな生き物と自然の生態系 」です。
今まで学んできた植物と動物というのは、自然界とどう関わり合って繋がっているのか、という事を書いていきたいと思います。
そこには「 小さな生き物たちの存在 」と「 自然界の守り神のような存在 」がありました。
目次
水の中の小さな生き物
池や川や海など水中には「 プランクトン 」という「 浮遊生物 」がいます。
稚魚や小魚がエサをもらわなくても生きていけるのは、プランクトンを食べているからです。
プランクトンは、肉眼では見えない微生物のような小さいものから、クラゲのような大きいものまで様々です。
プランクトンには「 植物プランクトン 」と「 動物プランクトン 」がいます。
植物プランクトンは「 自力で動けず、光合成で生きる 」ので日当たりの良い所で増殖します。陸上の植物のようなイメージです。
動物プランクトンは「 動きながら、植物プランクトンを食べて生きる 」ので陸上の動物のようなイメージです。
また「 ミドリムシ( ユーグレナ ) 」という「 動きながら、光合成で生きる 」不思議な生き物もいます。
食物連鎖のしくみ
植物は日光を浴びて自分で栄養分を作り出すことができますが、動物は自分で栄養分を作り出せません。
なので動物は「 植物や他の動物を食べて 」生きています。つまり「 動物は植物がいないと生きていけない 」という事です。
例えば、植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、動物プランクトンは稚魚や小魚に食べられ、小魚は中型の魚に食べられ、中型の魚も大型の魚に食べられます。
生き物はより大きな生き物に食べられていきます。大型の魚も大型の動物や人間に食べられたりします。
大型の動物も死んだら、体を微生物に食べられていきます。
このように生き物が「 食べる , 食べられる 」の関係を通して繋がっていることを「 食物連鎖 」と言います。
もちろん陸上でも同様に、植物を食べる虫や草食動物、その虫や草食動物を食べる肉食動物、その肉食動物を食べる大型肉食動物や人間という感じです。
食物連鎖の始まりは「 植物 」です。なので植物を「 生産者 」といい、動物を「 消費者 」と言います。
人間の食べ物は元をたどれば全て「 植物 」にたどり着きます。
そしてこの食物連鎖は自然界で常に「 循環( 一巡りして元へ戻ることを、繰り返す ) 」しています。
土と生き物のつながり
土の中にはミミズやダンゴムシなどの「 土壌生物 」や「 微生物 」がいます。
これらの生き物は「 落ち葉 , 動物のふんや死骸など 」を分解する働きを持っているので「 分解者 」と呼ばれています。
分解者によってこれらが分解されると「 水 , 二酸化炭素 , 窒素 , リン 」が生み出されます。
これらは植物の養分として土から吸収されたり、光合成に使われていきます。そのおかげで植物は成長することができるのです。
そして草食動物は植物を食べることで、デンプン( 炭水化物 )などの植物の栄養分を取り入れています。
肉食動物は草食動物を内臓も含めて食べることで、間接的に植物の養分を取り入れていると言われています。
つまり人間を含む動物は「 主に炭水化物をエネルギー源として生きている 」と考えることができます。
動物にとっての三大栄養素「 炭水化物 , タンパク質 , 脂質 」のうち、最も効率良くエネルギーを生み出すのは「 炭水化物 」だからです。
この炭水化物は植物が光合成で生み出したものなので、二酸化炭素が元になっています。
いわば植物や動物は二酸化炭素を間接的に摂取して生きているとも言えるので、二酸化炭素が無くなると生物は生きていけないという事になります。
無くならなくても、二酸化炭素が大きく減るとその分「 植物の生育は悪くなる 」と考えられます。
以上のような流れで「 微生物や土壌生物 , 植物 , 動物 」は「 土 」を通して繋がっています。
余談「 微生物と発酵と腐敗 」
発酵も腐敗も同じ意味で「 ある物が微生物の作用によって変質すること 」を言います。
ではなぜ 2 つの言葉に分かれているのかというと、人の価値観で「 有益なものを発酵 」「 有害なものを腐敗 」と分けたからです。
個人的な印象としては「 糖を分解するような時 」に「 発酵 」と呼ばれ「 タンパク質を分解するような時 」に「 腐敗 」と呼ばれている傾向があると感じます。
「 漬物やヨーグルトやお酒など 」は糖を分解して作られており「 発酵 」と呼ばれています。
動物の死骸が微生物などによって分解される時は「 タンパク質を分解 」していくので悪臭を放ちます。これが「 腐敗臭 」と呼ばれるものです。
ちなみに生きている動物が腐敗しないのは「 免疫機能 」があるからです。
腸内細菌の悪玉菌が多いと、口や体や便が臭くなると言われるのも「 悪玉菌がタンパク質を分解する 」からだと思います。
タンパク質の摂取が多いと、その分「 悪玉菌が必要になって増えていく 」ので、要注意だと思います。( 草食動物のふんより肉食動物のふんの方が臭いのもタンパク質の摂取が多い )
ちなみに「 善玉菌は炭水化物( 糖など )を分解する 」と言われています。
山とプランクトンの繋がり
山や森林にある「 落ち葉や土など 」が「 川や海に流れていく 」ことで、これらを養分として川や海の「 植物プランクトンが増殖 」していきます。
するとそれをエサとする「 動物プランクトンも増えて 」いき、食物連鎖の循環を生み出していきます。
自然の生態系
生き物がお互いに繋がりを持って生きている環境を「 生態系 」と言います。
生き物たちは生態系の中で、数のバランス( 割合 )を保ちながら暮らしています。
例えば、バッタはカエルがいることで数が増え過ぎないし、カエルもヘビがいることで増え過ぎないようになっています。
でもこのバランスは「 人間の手によって 」壊れてしまうことがあります。
例えば、農薬でバッタがいなくなると、カエルが減り、ヘビが減ってしまいます。するとヘビに食べられていたネズミが増えていってしまうかも知れません。
生態系のバランスが崩れると、特定の動物の異常繁殖やそれによる様々な被害( 農作物や森林が荒らされたり )、自然環境の汚染や森林の減少、作物の不作や疫病など様々な問題を起こす危険性があります。
生態系は、絶妙な仕組みで自然界とバランスを取っています。
生態系のバランスを取り戻すには、人間が手を出さず、そのまま、自然のままにしておくと、ゆっくりと戻っていくと言われています。
人間が暮らしている場所も、人間がいなくなって長い時間が経つと( 放っておくと )全て大自然に戻っていくと言われます。( 草や木が生えてきて人工物は植物に覆われていく )
つまり「 地球は人間を失っても生きていけますが、人間は地球を失ったら生きていけない 」という事です。
だから地球( 自然界 )に感謝して大切にしようと言われるのですね。
オオカミと生態系
日本では近年、シカ , イノシシ , サルなどによる森林の破壊や農作物の被害などが深刻化しています。
シカは一夫多妻制で数が増えやすく、目が届く範囲の草 , 葉 , 木( 枝や皮 )のほとんどを食べてしまうと言われています。
それにより木々が枯れていき、森林や山の草木が破壊されていってしまいます。
すると地表に植物が無くなり( 落ち葉も無い )、雨が直接地面に当たって土砂崩れが起きやすくなります。( 草木による保水機能が無いため )
森林に草木が無くなると「 昆虫がいなくなり 」、昆虫を食べていた「 小動物や鳥もいなくなり 」、結果的に多くの生き物たちが連鎖的に住処や食べ物を奪われて、絶滅に追い込まれる危険性があります。
イノシシやサルによる農作物の被害もなかなか解決ができず、時には人が襲われるような事態まで起きています。
これらの動物がこのような害を及ぼすようになった理由には「 人間によって自然がどんどん破壊され、野生動物の住処を奪ったから 」と言われています。
ただ別の理由もあり、それがシカ , イノシシ , サルの「 天敵がいなくなったから 」という理由です。
これらの動物の天敵が「 オオカミ 」です。オオカミは生態系の「 捕食者の頂点 」と言われています。
オオカミは明治時代に絶滅しました。原因はオオカミのエサとなる動物を人間が乱獲したからとか、家畜を襲ったり狂犬病に罹ったから駆除されたなど様々ですが、
人為的に駆除した事が一番の原因ではないかと言われています。
つまりオオカミは自然の環境変化によって淘汰されて絶滅したのではなく、人間の手によって絶滅させた種であるという事です。
これはまさに生態系のバランスを壊すきっかけとなる行為に思えます。
オオカミが絶滅してから、シカ , イノシシの数を抑えてくれていたのが、猟師( ハンター , 狩人 )の存在です。しかし昭和の終わり頃から後継者不足などで衰退していきました。
そして現在、シカ , イノシシ , サルは年々増え続けています。特にシカは驚異的な繁殖力で約 30 年で 10 倍くらいに増えたと言われています。
動物は自分たちで数を調節することはできません。だから自然界は「 捕食者 」という存在を用意したのでしょう。捕食者は「 自然の植物を草食動物から守る存在 」でもあるのです。
オオカミはその顔やイメージから悪者扱いされる事が多く、西洋東洋問わず「 童話や昔ばなし 」などでは大体悪役です。
しかし日本では「 オオカミ=大神 」として神社で祀られ「 狼信仰 」と呼ばれるものもあります。その由来は農作物を守ってくれた益獣だった事と言われています。
「 火伏せの神( 火除け , 火事が起きると遠吠えで知らせた ) 」とか「 山賊や鬼から村人を守って助けてくれた 」というような民話や伝説がある地域もあるみたいです。
以上のようにオオカミというのは「 自然界の守り神 」としての役割を担っていたのかも知れません。
水と生き物
水は生き物の体の大部分を占めています。
植物の体の約 80 ~ 90 % 、動物の体の約 60 ~ 70 % を水が占めていると言われています
人間は、赤ちゃんで約 75 % 、子供で約 70 % 、大人で約 60 % 、老人で約 50 % を水が占めていると言われます。
水は植物や動物の体中を巡って、栄養分や不要物を運んでいます。
そして水は魚や水草など、水の中の生き物たちの住処にも成っています。
また水は様々な形に変化しながら、地球上を巡っています。
水面( 海 , 湖など )や地面( 地上 )から水分が蒸発して水蒸気になり、水蒸気が雲になり、雲が雨や雪になり、雨や雪は土の中に染み込んでいきます。
染み込んでいった水は地下水として集まり、やがて湧水( 湧き水 )として地表に出ていきます。これが川の源流( 流れのもと )となり、やがて川となってまた海や湖に流れていきます。
こうした水の循環の中で、植物は土中の水を根から吸い上げ蒸散したり、動物も水を飲んだり、人間も生活用水や飲料水として利用しています。
このように生き物は水の循環によって生かされています。
あとがき
壮大でスケールの大きい話でしたが、自然界も微生物も植物も動物も「 全ては繋がっている 」という事は分かりました。
そしてそれらは繋がっているだけではなく「 循環しているもの 」でした。循環しているから繋がっていられるとも言えます。
皆それぞれ、自分にないものを他者から取り入れ、その自分も他者のために取り入れられ、巡り巡って「 消費者 」である動物は、全ての始まりの存在「 生産者である植物 」の栄養として土に還っていきます。
他者に与える一方である植物も、最終的には与えた相手( 生き物たち )が残したもので生かされています。
自然の生態系とは本当に不思議で、偉大で、絶妙な仕組みだと感じました。
その自然の生態系を、自然の一部である人間が破壊するような真似をしているというのは、なんとも皮肉( 予想や期待に反し、思い通りにいかない事 )なものだと感じます。
また「 二酸化炭素があるから生物は生きていける 」というのも、面白いと感じましたし勉強になりました。
確かに植物は二酸化炭素があるから、光合成で炭水化物である養分を作れるわけで、その養分を消費者として様々な動物が頂いていますね。
オオカミの話は個人的に「 目から鱗が落ちる( 大きな気付きや発見となる ) 」話でした。
シカって植物に対してはかなり暴力的なのだなと思いました。いま日本の自然を一番破壊しているのはシカなのかも知れません。災害の発生にも関わるので深刻です。
オオカミが自然に絶滅したのではなく、人間が絶滅させたというのは寂しい気がします。
オオカミやハンターが不在のいま、シカ , イノシシ , サルの異常繁殖による被害は、どう解決していくつもりなのでしょうか。
肉食動物は大量に繁殖することも少ないし、生きるために必要な分しか食べないと言われますが、草食動物は違いますよね。
そもそも繁殖力が高いですし、数をどんどん増やして、大量に植物を食べていってしまいます。
やっぱり肉食動物というのは、山や森林などの「 自然界の植物を守る存在 」のような気がします。
自然を食べる動物がいるなら、その動物を食べる動物がいないと、自然界のバランスが崩れてしまいますよね。
ちなみに、オオカミが人を襲うような事はほとんど起きないと言われています。世界でオオカミに襲われたという情報は滅多に聞かないと思います。( ここがクマやイノシシと違う所 )
オオカミは非常に警戒心が強く、人間を怖がっているのでそもそも姿を現さないようです。
余談「 救世主となったオオカミ 」
オオカミが生態系に及ぼす影響として最も有名なのが、アメリカの「 イエローストーン国立公園 」の事例です。
国立公園とは「 自然 , 風景 , 史跡 , 野生動物などを保存することを目的とした、国が管理する公園のこと 」です。
この公園には 70 年間オオカミがおらず、その間にどんどん自然環境が悪化していました。( 原因は天敵がいなくなったシカの増加による自然破壊 )
そこで生態系回復の目的のために、カナダから連れてきた 1 つのオオカミの群れ( ウルフパック , 14頭ほど )を放つことに成りました。これは野生動物をめぐる「 20 世紀最大の実験 」と呼ばれました。
これにより「 シカの数が減少 」して、植物たちが息を吹き返し「 木や林や森が蘇って 」いきました。そして同時に「 多くの鳥たち 」も住み始めました。
さらに木が増えたことで「 生態系エンジニア( 他の動物たちの生息地を作ったり変化させたりする生物 ) 」であるビーバーが住み着くようになりました。
ビーバーは草食性で木の皮なども食べますが、一番の特徴は「 ダム作り 」です。木をかじり倒し、泥や枝などで川を横断するようなダムを作ります。
このダムによって「 様々な動物たちがその周囲で生活する 」ようになります。ビーバーは「 自分の生活のために周囲の環境を作り替える唯一の動物( 人間以外で ) 」と言われています。
そしてオオカミがコヨーテも捕食することで、コヨーテの餌食になっていたウサギやネズミの数が増え、その結果、ワシ , イタチ , キツネ , アナグマなども増えました。
またオオカミの食べ残しを求めて、カラス , タカ , クマなどもやってきました。クマは木の実なども食べますが、シカの子も捕食します。
これらの植物や動物たちの影響によって、森林が安定したことで土壌も安定し、土砂崩れなども少なくなり、川の流れも安定して川の形も変わっていきました。
つまり生態系だけでなく地形まで改善されたという事です。それまでは何をやっても生態系を回復させる事はできなかったようです。
それが、以上のように「 1 つのオオカミの群れを放っただけ 」で達成されたのです。これはオオカミが自然界に奇跡をもたらせたとも言われています。
オオカミは捕食者の頂点なので多くの動物の命を奪っています。でもその裏では、植物や多くの生き物たちに命を与えているのです。
やっぱり「 オオカミは自然界の守り神 」のような気がします。
「 オオカミを失った国 」は「 大神を失った国 」なのかも知れません。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。