第 3 回のテーマは「 植物の分類&つくりとはたらき 」です。
前回( 植物のタネと成長&花の目的 )の続きとなる「 植物の話 」です。
今回は「 植物はどんなグループに分けられるのか、どんな構造になっているのか、どうやって生きているのか 」といった事を学んでいきます。
それと「 季節の変化と植物 」というのも書いて置きたいと思います。
目次
植物の分類
植物は「 種子植物( 受粉により種子を作り増える ) 」と「 胞子植物( 胞子をまいて単独で増える ) 」に分けられます。
植物の約 8 割は種子植物であり、多くは花を咲かせます。
胞子植物は「 シダ植物( 根 , 茎 , 葉を持つ )」と「 コケ植物( 根 , 茎 , 葉を持たない )」があります。
ちなみに藻類( ワカメなど )や菌類( キノコなど )も胞子で増えますが、植物ではないとされています。
種子植物は「 被子植物( 胚珠が子房に包まれている) 」と「 裸子植物( 胚珠が裸でむき出し) 」に分けられます。(種子になる胚珠が隠れて見えないか、むき出しで見えているかの違い)
ちなみに裸子植物は花びらが無いものが多く、木であるものが多いです。(マツ , スギ , ヒノキ , イチョウ , ソテツなど)
被子植物は「 双子葉類( 子葉が 2 枚 )」と「 単子葉類( 子葉が 1 枚 )」に分かれます。
双子葉類と単子葉類には特徴的な違いがあり、それは「 葉脈( 葉にある筋のようなもの、葉の血管のイメージ )」と「 根の形 」に表れます。
葉脈は「 網状脈( 真ん中に 1 本通り、その両サイドから網目状に広がる葉脈 )」と「 平行脈( 葉脈が交わらず、葉の先に向かって何本も平行に通っている葉脈 )」があり、
根は「 主根( 太い大きな 1 本の根 )から側根( 細い根 )が枝分かれしているもの 」と「 ひげ根( 細かいヒゲのような根がたくさん生えているもの )」があります。
双子葉類の特徴は「 網状脈 」と「 主根と側根 」であり、単子葉類の特徴は「 平行脈 」と「 ひげ根 」です。
植物のつくりとはたらき
植物は基本的に「 葉 , 茎 , 根 」の 3 つの部位で構成されています。
葉のはたらき
葉は「 光合成 」を行っています。
光合成とは「 植物が光に当たることで、体内の水と空気中の二酸化炭素から養分を作り、酸素を放出する 」はたらきの事です。
つまり「 光合成は養分( デンプン )を作り出すはたらき 」という事です。
光合成は植物の体にある「 葉緑体 」と呼ばれるところで行われています。葉緑体は「 葉 」に多いので、光合成はおもに葉で行われます。
この葉緑体の色が緑色なので「 植物の色は緑色が多い 」のです。
葉の大きさは、日光が当たりやすいように広い形になっています。
作った「 デンプン 」は水に溶けないので、水に溶ける「 糖 」に変えられ、茎によって全体に運ばれます。
そして糖を使って必要なエネルギー( 生きる力 )を生み出しています。
余った糖は再びデンプンに変えられ「 種子 , 茎 , 実 , 根など 」に蓄えられていきます。
植物は養分をデンプンとして作り出しデンプンの状態で蓄え、エネルギーを生み出すとき( 使うとき )に糖に変えて使っているというイメージです。
例えば、ジャガイモ( 地下茎 )やサツマイモ( 根 )などは「 デンプンを蓄えている部分 」です。(ジャガイモに側根が無く、日光に当てると緑色に変色するのは茎だから)
植物によっては、養分をデンプンではなく「 糖 」として蓄えるものもいます。砂糖の原料となる「 サトウキビ 」は茎に糖を蓄えているので甘いのです。
また、葉は「 蒸散 」も行っています。
蒸散とは「 植物が体内の水を水蒸気として放出すること 」です。
植物の葉には「 気孔 」という小さい穴があり、ここから蒸散が行われます。( 気孔は葉の裏側に特に集中している )
光合成で「 二酸化炭素を取り入れて、酸素を放出している 」のも気孔です。
蒸散の目的は「 体内の水分量の調節 」と「 体温の調節 」です。
水分量の調節は、体内の水分量を減らすことで「 根に水を吸う力が生まれる 」からです。
体温の調節は「 水は蒸発する時に周りから熱を奪う( 気化熱 )」ので、日光に長時間当たっていても適温を維持できます。
これは「 打ち水( 暑い日に道路や地面に水をまく )」や「 人の発汗作用( 汗が蒸発することで体温を調節 )と同じ原理です。
ちなみに「 濡れた服を着たままだと風邪を引く 」とか「 お風呂上がりで風に当たっていると湯冷めする 」と言われるのも「 気化熱 」により体が冷えるからです。
植物は、土に水がしっかりあるときは、たくさん水を吸い上げ気孔を開きどんどん蒸散を行います。
逆に、土に水が少ないときは、体内の水分量が少なくならないように、気孔を閉じ蒸散を抑えようとします。
余談「 緑のカーテン 」
水が蒸発するときに周囲から熱を奪う「 気化熱 」という性質は、植物も「 蒸散 」という形で利用していました。
真夏の炎天下の日に金属やコンクリートが触れないほど熱くなるのに、芝生などが熱くならないのは、植物が蒸散を行うことで温度が下がっているからです。
都市の中より森林の中の方が涼しいのも蒸散が理由の 1 つです。
このような植物の性質を利用したものが、建物の屋上や壁を植物で覆う「 緑のカーテン 」と呼ばれるものです。
葉が日光を遮ったり、蒸散の効果で、室内の温度を 3 ~ 4 ℃ ほど下げると言われています。
茎のはたらき
茎は「 葉や花を支える部分 」であり、根から吸った「 水 」と葉で作った「 養分 」を「 体全体に送る役割 」を果たしています。
根のはたらき
根は「 植物の体を支えたり、土から水( 肥料を含む )を吸収する部分 」です。
根にたくさん生えている毛のようなものを「 根毛 」といい、根毛があることで根の表面積が増え、より多く効率的に水を吸収することができます。
植物の根は成長のために十分な広さが確保されていれば、水をより多く吸収するために、出来るだけ広く深く伸びようとします。
ちなみに、根菜類( 地中にできる野菜 )のサツマイモ , 大根 , 人参 , ゴボウなどは主根が養分( デンプン )を蓄えて大きくなったものです。
その証拠にこれらは元々たくさんの側根がついています。
植物の呼吸と内部構造
呼吸のしくみ
植物も生き物なので呼吸をしています。植物の呼吸は「 全身の細胞 」で行われています。つまり葉でも茎でも根でも行っています。
呼吸とは「 空気中の酸素を取り入れ、体内の養分( 糖 )と反応させてエネルギー( 生きる力 )を生み出し、これによって生じた二酸化炭素を排出すること 」です。
「 呼吸はエネルギー( 生きる力 )を生み出すはたらき 」という事です。
光合成は光が当たっている間だけ行われますが、呼吸は生きている限り絶えず行われています。
水と養分の通り道
植物の体( 葉 , 茎 , 根 )には、光合成で作られた養分( デンプン→糖 )を運ぶ「 師管 」と根から吸い上げた水を運ぶ「 道管 」があります。
また、師管が集まって束になったものを「 師部 」といい、道管が集まって束になったものを「 木部(もくぶ) 」といいます。
そして師部と木部を合わせて「 維管束 」と呼びます。(繊維状の管が束になったイメージ)
維管束は植物にとっての「 血管 」のようなものです。なので葉の維管束のことを「 葉脈 」と呼んでいます。
つまり植物の血管には「 葉脈 , 茎の維管束 , 根の維管束 」があるということです。
ちなみに例えば、赤色の色素を溶かした水に植物の根を浸すと、植物の道管に赤い水が流れるので、葉や茎の道管部分が赤く色づきます。
茎や根を太くするもの
裸子植物や双子葉類( 被子植物 )には、一般的に「 茎や根の中 」に「 形成層 」というリング( 輪っか )状の成長する部分があります。(維管束の師部と木部の間を通っている)
この形成層が成長することで「 茎や根が太く 」なります。
裸子植物のマツ , スギ , ヒノキなどや双子葉類のサクラ , ウメなどの「 木の幹が太く成長する 」のは形成層のおかげです。
木の「 年輪 」は形成層の成長の跡です。なので年輪から「 樹齢( 木の年齢 ) 」が分かると言われています。
季節の変化と植物
ほとんどの植物は「 春や夏に育ち、冬は成長が止まる 」という特徴があります。
虫は植物の葉や花の蜜などをエサにしているものが多く、これらの葉や花は春や夏に多いので、虫も春や夏に多くなります。
秋になると葉は色を変えていきます。色の変化は植物の種類によって変わり、カエデは赤くなり、イチョウは黄色くなります。
葉が赤くなることを紅葉といい、黄色くなることを黄葉といいます。(どちらもコウヨウと読む)
さらに涼しくなっていくと、多くの木は「 葉 」を落としていきます。これを「 落葉 」といいます。
カエデ , イチョウ , サクラなど秋に落葉する木を「 落葉樹 」といい、落葉するとその木の全ての葉を落とします。
また、落葉しない植物もあり、マツ , スギ , ヒノキ , サザンカなどは秋になって涼しくなっても落葉しません。
このような木を「 常緑樹( 1 年を通して緑の葉をつける木 ) 」といいます。
冬の野菜が甘い理由
白菜 , 大根 , ネギなど「 冬を旬( 最も新鮮で美味しい時期 ) 」とする野菜は「 糖分が多くて甘い 」です。
植物の体内には大量の水があり、もし冬の寒さで体内の水が凍ってしまったら、細胞が壊れてしまいます。
なので体内の凍結を防ぐために「 植物は冬になると体内に大量の糖 」を溶かします。( 水よりも砂糖水の方が凍りにくい )
よって冬の野菜は甘くなるのです。
あとがき
数限りないほどある植物も分類してみると、意外とシンプルに分けられるものだと感じました。
植物の 8 割が種子植物というのは、受粉によって子孫を残すことが一番効率が良かったのかも知れません。
植物が作るデンプンも糖も「 炭水化物 」です。
なので光合成とは「 炭水化物を作り出すはたらき 」と言えます。( 二酸化炭素と水から作られるので「炭水化物」と呼ぶようです )
つまり、植物を生かしているのは炭水化物という事です。これは種子の時も同じでした。
そして呼吸とは「 炭水化物からエネルギー( 生きる力 )を生み出すはたらき 」と言うことができます。
「 デンプン 」を持ちながらも使うときは「 糖に変化 」させて使うというのは、実は「 人間も同じ 」です。
我々が摂取する炭水化物は主に「 デンプンの状態 」で摂取し、必要に応じて「 ブドウ糖(グルコース) 」に分解してエネルギーを生み出しています。
人体にとって最も重要なエネルギー源は「 ブドウ糖 」です。特に「 脳 」はブドウ糖しか利用できないと言われています。
植物が養分を糖ではなくデンプンの状態で蓄えるのは、デンプンの性質が貯蔵に向くからと言われています。
また体内が「 糖だらけ 」になるのは植物にとっても有害であるからと考えられています。
人体でいうと血液中の過剰な糖とは「 糖尿病 」ですね。また人間だけじゃなく「 動物も糖尿病になる 」と言われています。
つまり「 過剰な糖は生き物にとって有害 」という事です。
なので炭水化物を「 デンプン(お米など) 」として摂取するよりも「 糖( 砂糖 , 果糖 , ブドウ糖など ) 」として摂取する方が体にとっては負担が大きいと思います。
多糖類( デンプンなど )の摂取の場合は、体が必要な分だけ単糖類( ブドウ糖など )に分解し利用するので、血液が糖だらけになる可能性は低いと思いますが、
単糖類や二糖類( 砂糖など )は多く摂取してしまうと、血液中の糖が過剰になりやすいので要注意だと感じました。
このように「 植物の体 」と「 人間の体 」は何だか似ています。生き物の原点は「 植物 」にあるのかも知れません。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。