第 14 回のテーマは「 物理で動く様々な道具 」です。
「 てこ、天秤(てんびん)、輪軸(りんじく)、バネ、ゴム、振り子(ふりこ)、水時計、日時計 」といった、物理の世界でよく登場する道具について書いていきたいと思います。
目次
てこの仕組み
「 弱い力で重たいものを動かしたり、小さな運動(動き)を大きな運動に変換する事ができる道具 」です。
てこには「 支点、力点、作用点 」があります。
イメージしやすい一般的な「 てこの形 」としては、板などを使い、板を支える固定された「 支点( てこの動きを支える、回転軸の中心部分 ) 」
そして板の両端がそれぞれ、力を加える「 力点 」、物に力が働く「 作用点 」となっています。
この状態で、力点に力を加えると、支点を中心に板が傾き、作用点にある物が「 動いたり、持ち上がったり 」します。
てこは動かす物が同じでも「 支点と力点の距離、支点と作用点の距離 」によって必要な力の大きさが変わります。
「 支点から力点までの距離が長いほど、小さな力で物を動かす事ができる 」( つまりこの距離が短いと重く感じ、大きな力が必要になる )
「 支点から作用点までの距離が短いほど、小さな力で物を動かす事ができる 」( この距離が長いと重く感じ、大きな力が必要になる )
よって「 支点と力点の距離( A )を長く、支点と作用点の距離( B )を短く 」すると「 小さな力で、大きな力が生まれる 」という事です。
つまり、てこは B より A の方が長いときに、小さい力で大きな物を動かすことができると言えます。
てこのつり合い( 天秤 )
てこの力で物を持ち上げたとき、板が傾かずに「 水平 」になっている状態を「 つり合っている 」と言います。
「 つり合った状態のてこ 」では、以下の関係が成り立っています。
「 力点にかかる力×支点と力点の距離( A ) = 作用点にかかる力×支点と作用点の距離( B ) 」
これを「 てこのつり合いの法則( 公式 ) 」と言ったりします。
なので、てこがつり合っているとき「 支点と力点の距離( A ) = 支点と作用点の距離( B ) 」であるなら「 力点と作用点にかかっている力は、同じである 」ということです。
「 天秤( 上皿てんびん ) 」は、この「 てこのつり合い 」を利用して「 質量 」をはかっています。( 例えば 100 g のおもりとつり合った物は 100 g と分かる )
「 上皿てんびん 」とは「 はかるもの 」と「 おもり 」を「 左右の皿の上に乗せてはかる 」天秤のことです。( 上皿てんびんは質量をはかるのに向いている )
天秤( 左右のつり合いによって物の質量をはかる )は中央に支点があり、棒の左右(両端)に物をつるして、つり合わせる道具です。
天秤の棒を支えている部分が支点となり、支点から左右同じ距離に同じ質量のおもりをつるすことで、つり合わせることができます。
天秤で質量の違うものをつり合わせる時は、上記の「 てこのつり合いの公式 」を使い、左右で「 質量(おもりの質量)×距離(支点との距離) 」が「 等しくなる 」ように、距離を調節すれば良いです。
様々な「てこの形」
てこは「 中央 」がどの点( 支点、力点、作用点 )なのかで「 3 つの型(タイプ) 」に分けられます。
- 中央が「 支点 」の例は「 シーソー、ハサミ、ペンチ、くぎ抜き(バール)など 」
- 中央が「 力点 」の例は「 ピンセット、トングなど 」
- 中央が「 作用点 」の例は「 せん抜き、空き缶つぶし(足で踏むタイプ)など 」
「 せん抜き 」は「 作用点の部分を、ビンのフタの下に引っかけて、支点でフタの上部を押さえながら(支えながら)、力点に力を加えて(上に力を加える)、開ける 」という道具です。
支点、力点、作用点の位置関係が変わっても、「 B (支点と作用点の距離)より A (支点と力点の距離)の方が長いとき、小さい力で大きな物を動かすことができる 」というルールは変わりません。
「 支点 or 作用点 」が「 中央のもの 」の特徴は「 小さな力で大きな力を生み出せるが、微妙な力の調節が難しい 」と言えます。
「 力点 」が「 中央のもの 」の特徴は「 微妙な力の調節はできるが、大きな力は生み出せない 」と言えます。
また「 てこを 2 つ組み合わせた道具 」もあります。例えば「 爪切り(つめきり) 」です。
爪切りは、爪を切る部分のピンセット型(中央が力点)のてこの上に、せん抜き型(中央が作用点)のてこがくっついた形になっています。
爪を切るときに、親指で上から押す部分が「 力点(せん抜き型) 」となり、その力が「 作用点(せん抜き型) 」に働き、同時にこの部分が下の「 力点(ピンセット型) 」となり、その力で「 作用点(ピンセット型) 」である刃が閉じて爪が切れます。
輪軸(りんじく)の仕組み
「 輪(わ)を回すと、輪の中心にくっついた軸(じく)も一緒に回る 」このような仕組みを「 輪軸(りんじく) 」と言います。( ネジ回しに使うドライバーも輪軸の仕組み )
輪軸は「 大きな輪と小さな軸を組み合わせて、物を動かす仕組み 」です。( 大きな輪と小さな軸なので輪軸 )
輪軸は「 てこ 」のように「 小さな力で大きな力を生み出す 」ことができます。( 車のハンドルも輪軸 )
輪軸は「 輪が大きいほど、大きな力が生まれる 」ので、ドライバー(ネジ回し)の持ち手や車のハンドルも、輪が大きい方が中心の軸を強い力で回すことができるので、回しやすくなります。
物に働く「 軸の大きさに対して 」、力を加える「 輪の大きさが大きくなるほど 」、大きな力を生み出せます。( てこの作用点と力点の関係に似ている )
輪の半径と必要な力
輪軸は「 軸の半径が一定(変わらない) 」なら「 輪の半径 」と「 必要な力の大きさ 」は「 反比例 」します。
つまり「 輪の半径が 2 倍になると、必要な力は 1/2 になる 」ということです。( 輪の半径が 3 倍になると、必要な力は 1/3 になる )
輪軸とてこの違い
輪軸もてこも「 小さな力を大きな力に変える 」ものですが、てこが「 真っすぐに力を与える 」のに対し、輪軸は「 回転させるように力を与える 」と言えます。
なので例えば、井戸に輪軸を設置して、軸の部分にロープを巻きつけ、ロープの先に桶(おけ)を取り付けると、輪を回すことで井戸の水を汲(く)むことが出来ます。
このように「 回転する力を与える 」輪軸ならではの利用法もあります。
輪軸の利用
輪軸は「 小さな動き 」を「 大きな動き 」にする事もできます。
例えば、円を描ける文房具の「 コンパス 」です。
コンパスは中心の軸を持って回すことで、輪となる部分が一緒に回る、輪軸の仕組みです。
この時「 軸の半径に対し、輪の半径が大きくなるほど 」大きな動きにすることが出来ます。( コンパスを大きく広げると、軸の動きが小さくても、大きな円を描ける )
輪軸には「 輪を回すことで、軸に大きな力が生まれるもの 」と「 軸を回すことで、輪に大きな動きが生まれるもの 」があります。
前者が「 車のハンドル、水道の蛇口(じゃぐち)、ドアノブ、ハンドル付きの鉛筆削り(ハンドルを回すことで刃のついた円筒が周り、軸で固定された鉛筆を削る) 」などで、
後者が「 コンパス、竹とんぼ、独楽(こま) 」などです。
バネの仕組み
バネには「 バネ自体の長さ 」と「 伸びた分の長さ 」があります。
「 バネの長さ 」というのは「 バネ自体の長さ + 伸びた分の長さ 」のことを指します。
「 伸びる長さ 」は「 つり下げるおもりの重さ(重量)、引っぱる力の大きさ 」に「 比例 」します。( フックの法則 )
「 ばねばかり(ニュートンはかり) 」という「 おもりをつり下げたり、引っぱったり 」することで、その「 重さ(重量)や引っぱる力の大きさ 」をはかる道具がありますが、これはフックの法則を利用しています。
ばねばかり(ニュートンはかり)は「 重さ(重量) 」をはかるのに向いています。
ちなみに質量と重さ(重量)の違いについては「 質量と体積と密度 」の「 質量と重さ(重量)の違い 」というところで解説しております。
伸びても縮んでも元に戻る理由
まず「 固体 」には「 弾性 」という「 物体に力を加えて変形させても、その力が無くなれば、元の形に戻るという性質 」があります。
しかし、弾性には限界があり、加える力が弾性の限界を超えると、元の形に戻らなくなります。
例えば、鉄の針金(はりがね)は弾性が低いので、ちょっと力を加えると、元の形に戻らなくなります。
バネの場合は「 鋼(はがね) or 鋼鉄(こうてつ) 」と呼ばれる「 強い鉄 」で出来ているものが多く、鋼は「 弾性が高い 」のである程度の変形であれば、元に戻ります。
また、バネは輪をいくつも重ねたような形をしており、1 つ 1 つの輪の小さな変形が重なって、全体で大きな変形をしています。
もちろん、バネ(鋼)にも弾性の限界があるので、それを超える力が加わると、変形したまま元の形に戻らなくなります。
ちなみに、鋼鉄に似た言葉で「 鉄鋼(てっこう) 」という言葉がありますが、これは「 鉄や鋼鉄などの鉄材の総称(まとめた呼び方) 」です。
バネの利用例としては「 洗濯バサミ、ベッドのスプリング、自転車のサドルや車のサスペンション、書類を留めるクリップ 」など書き切れないくらい様々な形で広く利用されています。
ゴムの性質
ゴムは、伸ばしたり縮めたり(ねじったり)すると、元の形に戻ろうとする力があります。
つまり「 弾性が高い 」ということです。(ゴムやバネは弾性力が強い)
特に「 ゴム 」は金属(バネ)に比べて、非常に弾性が高く、元の長さの数倍に伸ばしても千切れず、力を取り去るとすぐに元の長さに戻ります。
そして、ゴムの強い弾性力で物を動かしたり、物を締め付けたり、隙間を埋めたりといった事もできます。
例えば、模型飛行機のプロペラを回すのに使われていたり( ゴムをねじった時、それが元に戻ろうとする力 )、理科の工作で使われるゴムの力( 伸びたゴムが元に戻ろうとする力 )で走る車に使われていたり、
また、袋などの口を止めたり、髪を結んだりというのは、伸びたゴムが元に戻ろうとする力を、物を締め付けるという目的に使ったものです。
他にも、液体や気体を通しにくく、曲がりやすいという性質を利用して、水回りやガスの「 ホース 」に使われています。
水回りや容器のフタに、ゴムのパッキン(液体や気体のもれを防ぎ密封させるもの)を使うのも、ゴムの弾性で隙間を埋めるためです。
そして、振動や衝撃を和らげるためにも、ゴムは使われています。
例えば、自転車や車などの「 タイヤ 」です。タイヤの形が凹んだりして変形することで、衝撃を吸収しています。
これによって凸凹(でこぼこ)の道路でも、衝撃が和らぎ快適に進むことが出来ます。( タイヤで衝撃を吸収し、次にバネであるサスペンションで衝撃は大幅に弱められる )
他にも、スニーカー(運動靴)などのソール(靴底)にゴムが使われているのも、歩いたり、走ったりするときの衝撃を和らげるためです。
そして、ゴムの性質として、短く伸ばすより「 長く伸ばした方が、弾性力(元に戻ろうとする力)が強く働く 」ので、より強い力が生まれます。
同様に「 ねじる回数が多いほど、強い力が生まれる 」と言えます。
また、ゴムは「 太くしたり、長くしたり、数を増やしたりするほど、強い力が生まれる 」という性質もあります。
振り子(ふりこ)の仕組み
「 振り子 」とは、糸などの先に「 おもりをつけて揺らす 」ものです。
糸をつるす点( 支点 )を固定し、もう一方( 下にたらした糸の先 )におもりをつけて、左 or 右に揺らすと規則的にしばらく左右に行ったり来たり振れ続けます。
このような動きをするものを「 振り子 」と言います。
「 支点 」から「 おもりの中心までの長さ 」を「 振り子の長さ 」と言います。( 糸の長さではありません )
振り子が「 1 往復( 振り子が動き始めた位置に戻ってくるまで )する時間 」を「 周期 」と言います。
「 振り子の長さ 」が長くなると、振り子が「 1 往復する時間( 周期 ) 」も長くなり、短くなると、周期も短くなります。
支点から真下におもりをたらし「 止まっている状態のおもりの中心 」から「 最大( 振れの端 )まで振れた時のおもりの中心 」までの幅を「 振れ幅 」と言います。
( 振れ幅は振れの端から端までではなく、中央から端までを指すということ )振れ幅は左右同じになります。
また、振り子は振れの端に近づくほど、スピードが遅くなり、端に到達すると反対方向に動き出します。
振れの真ん中( 支点の真下 )に近づくほど、スピードが速くなり、支点の真下の位置で最も速くなります。( 振れの端では動きが遅く、振れの真ん中では動きが速い )
ちなみに振り子の周期( 往復時間 )をはかるときは、1 回ごとにはかるのは速すぎて大変なので、例えば 10 回往復する時間をはかり、その時間を 10 で割って求めます。
また振り子は、おもりの材質が変わっても、周期は変わりません。( ビー玉、鉄の玉、粘土の玉でも同じ )
振り子の共振( 共鳴 )
物にはそれぞれ「 その物が最も振動しやすい振動数 」というものがあり、これを「 固有振動数 」と言います。
固有振動数の同じ物が近くにある場合、どちらか一方が振動したり、音( 空気の振動 )が鳴ったりすると、もう一方も大きく振動したり、音が鳴ったりします。
これを「 共振( 共鳴 ) 」と言います。共振( 共鳴 )については「 音の性質 」の「 共鳴( 共振 ) 」というところで解説しております。
振り子は「 糸の長さ 」で「 固有振動数 」が決まります。
なので例えば、1 本の糸を横に張って、そこに少し間隔を空けて、振り子を 4 つ( A〜D )つるします。このとき「 AとC は糸の長さが同じ振り子 」にします。
この状態で、A を揺らすと C も揺れ始めます。( BとD は動かない ) AとC は固有振動数が同じなので、共振が起こったということです。
振り子の等時性
「 振り子の長さ 」が「 同じ 」であれば、おもりの質量や振れ幅を変えても、周期( 1 往復する時間 )はほとんど変わらない。
これを「 振り子の等時性 」と言います。( 振り子の長さによってのみ、周期が変わる )
振り子の等時性を利用した代表的な道具が「 振り子時計 」です。
振り子時計が登場したことで、かなり正確に( 1 日で誤差が数分 )時間をはかれるようになりました。( それまでの機械式時計は 1 日で誤差が 1 時間ほども出ていた )
振り子時計は、時計の中のおもりの位置を、上下に動かして変えることで「 振り子の長さ 」を変えて、秒針の進む速さを調節できます。
「 振り子の等時性 」は 16〜17 世紀のイタリアの科学者(物理学者、天文学者)、哲学者である「 ガリレオ・ガリレイ 」が発見しました。
ガリレオは教会でつるされたランプを見て、揺れの大きさ( 振れ幅 )に関係なく、周期が一定であることに気付きました。その時ガリレオは自分の脈(みゃく)で周期(時間)を確かめたと言われています。
振り子の利用例
音楽のテンポ(速さ)を示す「 メトロノーム 」は、棒が左右に振れる時間が一定に保たれるように出来ています。
棒についている「 おもり 」を上に動かすと「 振り子の長さ 」が長くなるので「 振り子の周期 」が長くなり、テンポがゆっくりになります。
( おもりを下に動かすと、振り子の長さが短くなるので、振り子の周期が短くなり、テンポが速くなる )
また、公園の「 ブランコ 」などは、まさに「 振り子の遊具 」と言えます。
近代科学の父「ガリレオ・ガリレイ」
ガリレオ以前の科学界は、実験や観察が重要視されておらず、例えば「 神が創造した地球は、宇宙の中心でなければならない 」というような宗教的な考えが重要視されていました。
その結果「 他の星は、地球の周りを回っているはずだ( 天動説 ) 」と考えられていました。
これに対し、ガリレオは「 観察と実験 」を行い、得られた事実をもとに「 自然はこうなっている 」と考えました。
このような姿勢によって、ガリレオは「 地動説 」の根拠となる様々な証拠を発見していきました。
また、自然現象の裏に隠れた「 法則 」を「 数学で証明 」していきました。
このような事から、ガリレオは「 近代科学の父 」と呼ばれています。
ガリレオの「 思考実験 」
思考実験とは「 頭の中で想像するだけの実験 」のことです。
ガリレオ以前は、重いものは軽いものより速く落ちると考えられていたのですが、ガリレオはこれを否定するための思考実験を行いました。
「 重いものほど、速く落下する 」と仮定すると、
例えば、大小 2 つの鉄球があったとき「 小さい方は遅く、大きい方は速く落下する 」はずだ。
では、この 2 つの鉄球を「 ヒモでつないで、1 つの物体 」としたとき、落下速度はどうなるのか。
「 速度 」で考えると、速いものと遅いものをつなぐので「 大と小の落下速度の、中間ぐらいの速度 」になるはずだ。つまり「 大の速度より遅く落ちる 」はずだ。
しかし「 質量 」で考えると、全体としては「 大小の鉄球を合計した質量 」になり、より重いものになったのだから「 大の速度より速く落ちる 」はずだ。
このように、同じ条件なのに全く違う答え( 結果 )が出てしまう( 矛盾が生じてしまう )のは、そもそもの前提条件である「 重い方が速く落下する( 落下速度が速い ) 」という考えが間違っているからである。
これがガリレオが行った「 思考実験による否定 」です。
そこからガリレオは「 同じ高さから同時に、質量の違う球を落としても、同時に地面に着く 」
つまり「 質量を変えても、落下速度は変わらない 」ことを証明しました。
ただ、これは正確に言うと「 空気抵抗を考えなければ( 空気抵抗を同じにしたら ) 」という「 前提条件 」が付きます。
例えば、風船とおぼん(トレイ)を同じ高さから同時に落とすと、おぼんの方が速く落ちるのは、おぼんの方が重たいからではなく、風船が空気抵抗を受けて遅くなったからです。
なので、風船の下におぼんを敷いて、両者を同時に落とすと、同時に落ちていきます。
もう 1 例として、りんごとティッシュ 1 枚を同時に落とすと、りんごの方が速く落ちますが、りんごと丸めたティッシュなら、ほぼ同時に落ちていきます。( 空気抵抗が変わっただけ )
つまり「 空気抵抗を考えなければ 」全ての物体は同時に落ちる( 落下速度は同じ )ということです。( 重いかどうかは全く関係ない )
実際は重いものほど速く落ちる
でも、現実は「 重いもの( 質量の大きいもの )ほど、落下速度は速い 」です。なぜでしょうか。
これを少し、簡単に説明してみます。
物が落下するとき、物には「 下向きの力( 重力 ) 」と「 上向きの力( 空気抵抗力 ) 」の 2 つの力がかかっています。
そして「 重力、いわゆる引力は質量が大きくなるほど、大きくなる 」という傾向があります。
重力とは一般的に「 地球と地球上にある物の間に働く力 」のことで「 引力+遠心力( 慣性力 ) 」の事ですが、地球の重力における遠心力の影響は非常に小さいので「 地球の重力=地球の引力 」と考えられます。
引力とは「 質量のある物同士の間に働く、互いを引っ張り合う力 」のことで「 質量のある全ての物が有する力 」なので「 万有引力 」とも呼ばれています。
重力と引力と遠心力( 慣性力 )については「 質量と体積と密度 」の「 質量と重さ( 重量 )の違い 」というところで解説しております。
よって、質量が大きいもの( 重いもの )ほど、大きな重力がかかるという事です。その結果「 落下速度が速くなる 」というわけです。
例えば、ゴルフボールとピンポン玉では、ゴルフボールの方が質量が大きいので、落下速度が速くなります。
また「 雹( ひょう、空から降る氷の粒 ) 」が大きいもの( 重いもの )ほど、落下速度が速くなって危険と言われる理由です。
( 雹は直径 5 mmで時速 36 km、10 mmで時速 50 km、50 mmで時速 115 km、70 mmで時速 140 kmのスピードで落ちてくるので、ガラスが割れたり、大怪我をする人が出てきてしまいます )
ちなみに、空気抵抗は体積に影響される事が多いので、物の形や大きさが同じであれば、空気抵抗はほとんど同じだと考えられます。
このように「 質量が大きくなる事で、スピードが速くなる 」というのは「 物が斜面を転がり( 滑り )落ちる場合 」でも同様です。
物が斜面を転がる場合も、質量が大きいもの( 重いもの )が転がってくる時の方が、スピードが速く力強いです。( だから雪崩や土砂崩れが危険 )
ただしこの場合でも、空気抵抗を考えなければ、質量の大きさ( 重いか軽いか )によるスピードの変化は起こりません。
余談ですが「 軽いピンポン玉より、重いゴルフボールの方が、遠くに飛ばしやすい 」のも、質量の違いによる変化です。
「 同じ速度で打ち出した場合、軽いものより重いものの方が、大きな力を持っているので、空気抵抗による減速があっても力を残したまま、より遠くまで飛んでいく 」という事です。
ただしこの場合も、空気抵抗を考えなければ、質量の大きさによる飛距離の変化は起こりません。
水時計の仕組み
水槽(すいそう)の中に水があるとき、水槽の底に穴をあけると、穴から水が出ます。
このとき、穴から出る水の量は「 水槽の底から水面までの高さで決まる 」という原理があります。
つまり「 水面の高さを一定に保てれば、穴から出る水の量も一定に保つことができる 」というわけです。
そして、その状態で穴から出た水を「 別の水槽 」に溜めておけば、その溜まった水量を見て、時間がどれだけ過ぎたのかが分かります。
これが「 水時計の理論 」です。
具体的な形
例えば「 水槽を A , B , C と 3 つ用意 」して、見て時間を判断する水槽( 穴から出た水を溜める水槽 )を「 A 」として、
A に水を流す水槽( 穴をあけた水槽 )を「 B 」として、B の水面を一定に保つために B に水を流す水槽を「 C 」とします。
そして、B の水面に軽くて水に浮く「 浮子(うき) 」を置いて、この浮子に C から B に流す水を調節するレバーをくっつけます。
つまり、B の水面の高さが変わると、浮子の高さも変わり、調節レバーの開閉によって流す水の量が調節されるという仕組みにします。
この仕組みによって、常に B の水面の高さを一定に保つことが出来ます。そして結果的に A の水面が高くなる速度を一定に保つことができ、時刻の変化が分かるようになります。
別の例としては「 水槽に穴をあけずに A , B , C の 3 つの水槽を階段のように 」置きます。( 最下段を A , 真ん中を B , 最上段を C とする )
この 3 つを「 ホースや管 」で繋ぎます。このとき「 ホースの中や管の中は水で満たしておく 」ことがポイントです。
すると「 サイフォンの原理 」によって、自動的に「 水が一定量 」A に流れ続けます。
C → B → A の水の流れる量が一定になるので、B の水面の高さを一定に保ったまま、A に水が一定量流れ続けるということです。
あとは、C の水が空っぽにならないように、定期的に C に水を入れてやれば OK です。ちなみに水槽の数を増やしていくほど、より正確に時をはかることが出来ます。
サイフォンの原理
サイフォンの原理とは、高い位置にある液体を、管などを使って低い位置に流すとき「 管の中が液体で満たされていれば 」ポンプで汲み上げなくても、自動で管を伝って流れていく原理のことです。
具体的な方法としては、ホースを水の中に沈めて空気を抜いて、ホース内を水で満たします。
そして、水中で片方のホースの口を指で塞ぎ、その塞いで密閉した方のホースの口を水から上げます。( もう片方のホースの口は水中のまま )
そして低い位置で、塞いでいた指を離すと、ホースの口から水が流れ出します。
このサイフォンの原理が、日常的に身近で使われている例が「 灯油ポンプ 」です。
ポリタンクに入った灯油を、石油ストーブなどの給油タンクに移すとき「 ポリタンク内の灯油の液面 」が、給油タンク内の灯油の液面より「 高くなる位置 」に置きます。
そして両者を「 灯油ポンプ 」で繋ぎ、ポンプの頭のキャップを締め( 空気が入らないようにする )、ポンプを何度か押して灯油を吸い上げ、灯油ポンプの管の中を灯油で満たします。
すると、あとはサイフォンの原理によって、自動で灯油は給油タンク内に流れ続けます。( ポンプのキャップを緩め、空気を入れると流れが止まる )
ちなみに灯油は「 石油製品 」の一種で、石油製品には他に「 ガソリン、軽油、重油 」などがあります。
時の記念日
日本でも西暦 671 年に天智天皇が、唐から伝えられた「 漏刻( ろうこく ) 」と呼ばれる水時計を建造し、初めて国民に時刻を知らせました。
この日が現在の太陽暦に直すと「 6 月 10 日 」だったので、1920 年( 大正 9 年 )に 6 月 10 日を「 時の記念日 」として制定しました。
太陽暦と太陰暦
「 太陽暦 」とは「 地球が太陽の周りを 1 周する( 公転 )日数を基準として定められた暦( こよみ、カレンダー ) 」です。
太陽暦は 1 年が 365 日で、4 年に一度「 閏年( うるうどし ) 」として、1 年が 366 日になります。( 閏年の目的は季節と暦を一致させるため )
太陽暦は太陽が当たる角度や方向( 太陽と地球の位置関係 )で暦を定めているので「 季節に沿った暦 」と言えます。( 自然の変化と暦が一致するので、農耕において重要 )
「 太陰暦 」とは「 月の満ち欠けを基準として定められた暦 」です。
つまり「 新月が再び新月になるまでの期間を 1 ヶ月 」としています。( 新月→上弦→満月→下弦→新月で 1 ヶ月 )
なので「 1 ヶ月が約 29.5 日 」となります。( 毎月 1 日は新月で、15 日は満月となる )
太陰暦は「 月の暦 」なので、毎月の日付と月の形( 明るさ )が一致します。昔は電気が無かったので、月の明るさはとても重要でした。( 新月は本当に真っ暗 )
なので、夜のお祭りなど夜間の行事や夜の予定が立てやすいと言えます。戦(いくさ)でも夜襲時など月の形で作戦を決めていました。
そして海での「 潮の満ち引き( 干潮・満潮 ) 」も月の引力の影響を受けるので、満ち引きの大きさを予想するにも「 月の暦 」は便利でした。( 漁業にも関わる )
また、一説には「 月は生命を司る 」つまり「 月は生き物の体に大きな影響を与えている 」とも言われています。
なので「 狩猟民族では太陰暦が重要 」のようです。( 動物の動きは月が支配している )
ただ、太陰暦は実際の季節とはズレが生じていきます。これを解消するために生まれたのが「 太陰太陽暦 」と言うものです。
太陰太陽暦とは「 太陰暦と太陽暦を組み合わせた暦 」です。
普段は毎月「 太陰暦 」で過ごし「 およそ 3 年に一度 」1 ヶ月増やして「 1 年を 13 ヶ月 」にして調整していました。
この 3 年に一度増える 1 ヶ月のことを「 閏月( うるうづき ) 」と言います。( 閏月の目的は季節とのズレを調整するため )
日本で「 太陰太陽暦 」は、西暦 1685 年( 江戸時代 )から 1872 年( 明治 5 年 )まで使われていました。
つまり昔の日本人は「 太陰暦と太陽暦の両方を活用していた 」ということです。
江戸時代が舞台の小説などで、閏◯月( 閏 3 月など )という言葉が出てくるのが、閏月です。
そして現在の「 太陽暦 」は、西暦 1873 年( 明治 6 年 )から始まったものです。
日時計の仕組み
太陽の光の通り道に、光を遮る(さえぎる)ものがあると「 影 」ができます。
このとき「 影は太陽の反対側 」にできます。つまり「 どんな影( 様々な物の影 )も全て同じ方向にできる 」という事です。
太陽は「 東から昇り、南の空を通り、西に沈む 」という動きです。
太陽の動きと共に、日光によってできる影も動いていきます。( 太陽が東→南→西なので、影は西→北→東と動く )
よって太陽の向きで、影のできる向きが変わるので、影の向きからおおよその時刻が分かるという事です。
この仕組みを利用したものが「 日時計 」です。
最も単純な日時計の形状としては、地面に垂直に棒を 1 本立てたものです。この棒の「 影の向きや長さ 」の変化でおおよその時刻を知ることができます。
「 影の長さ 」というのは、季節によって太陽の高さが変わるので、おおよその季節が分かります。( 夏は太陽が高い位置にあるので影が短く、冬は太陽が低い位置にあるので影が長くなる )
日時計は「 人類最古の時計 」と言われています。
ですが「 くもりの日や雨の日 」では「 直射日光が当たらない 」ので影ができず、使えません。これが大きな欠点でした。
この欠点を克服したのが「 水時計 」と言われています。
ちなみにその後「 砂時計 」も誕生しましたが、砂時計は時刻をはかるものではなく、いわば「 タイマー( 一定の時間経過を知らせるもの ) 」の役割だけです。
また「 火時計 」という「 線香やろうそくなどの燃えた量で時間をはかる 」というものも、日時計や水時計の時代には使われていたようですが、精度は悪かったみたいです。
あとがき
「 物理で動く様々な道具 」ということで、少しですが、自分が学んだものを紹介させて頂きました。
また「 振り子 」のことを学んでいたら「 ガリレオ・ガリレイ 」が出てきたので、少し紹介しました。
「 思考実験 」というのは初めて聞いたのですが、有名なものらしいですね。
様々な知識があれば、わざわざ実験をしなくても、頭の中でそれを試してみることで、明らかに無理なことやおかしいことに気付けるという事でした。
これは科学者でない私たちも、日常で多少はやっていますね。想像して「 これは無理だ、やってみるまでもない 」というやつです。
「 バネとゴム 」は共に「 弾性が強い 」ものですが、実際の使用例を見てみると、バネが主に反動や反発を利用しているのに対して、
ゴムは物を締め付けたり、隙間を埋めて密封したり、衝撃を和らげたりといった利用の仕方が多い気がします。
「 振り子の固有振動数 」は「 糸の長さ 」で決まるので、振り子だと簡単に「 共振 」が起こせるのは面白いです。
「 太陰暦と太陽暦 」は「 時の記念日 」で太陽暦という言葉が出てきたので、少し調べてみました。
普段生活していて、月の形を意識することはあまりないので「 毎月の日付と月の形が一致 」する「 太陰暦 」は興味深かったです。
道具に注目することで、様々な物理の現象を知ることができました。
道具というのは「 人類がそれまで積み重ねた、理科の知識が詰め込まれたもの 」ということですね。偉大です。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。